第140回直木賞に選ばれた天童 荒太(てんどうあらた)さん(48)
「天童荒太は次の本がいつになるか分からないと、選考委員の方々が気を使ってくれたのでしょうか」。記者会見の冒頭、会場をどっと沸かせた。
ミリオンセラー「永遠の仔(こ)」から10年。本作の執筆に7年もかかったのは、「こんな人物を、現実を生きる読者に必要だと思ってもらえるか、問い続けてきたから」。
主人公は、全国の事故や事件の現場を訪ね、そこで死んだ見ず知らずの人を悼む青年。込めた思いは切実だ。「人の死に軽重をつければ、生きる人の命に軽重をつけることにもなる。誰の死も等しく扱う存在がいたらどうだろうか」
松山市に生まれ、大学では演劇学を学び、卒業後は映画脚本も手がけたが、「感情をより豊かに表現できる」と小説を選んだ。勇気をくれたのは、児童虐待を扱った「永遠の仔」に共鳴した読者から、5000を超える手紙が届いたこと。自分の本を、大切な存在として心の中に置いてくれる人の多さに驚いた。
「以来、読者が何を欲しているのか、その答えを探して書いている。だから、この受賞は、あなた方のおかげです」(文化部 村田雅幸)(09年1月16日 読売新聞)
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