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2008年12月 9日 (火)

大塚史朗詩集「上毛野(かみつけの)万葉唱和」(群馬詩人会議出版)

 この詩集の表紙には、木漏れ陽に輝く石碑の写真がある。

 伊香保風 吹く日 吹かぬ日 ありといえど 吾が戀のみし 時無かりけり   
                    万葉集巻第十四上野国歌  伊藤信吉 書

あとがきに「出会いとは不思議なものである。人と人との出会いがなければこの詩集は生まれなかったろう。今から十五年近く前、郷土出身の詩人で評論家の伊藤信吉さんが、我が町の三宮神社に出かけてきてくれた。本人揮毫の万葉歌碑を見に来たのだ。前年の七月十四日の除幕式に出られなかった、と言って。(後略)」。そして11年前に、雑誌「農民文学」に発表したものを、詩集にまとめたものだという。
 作品はどれも、伊香保上毛野にちなんだ万葉集の恋歌をまず掲げ、そこに古世から現代につづく、大地に根を張って生きる生命力をうたったものが多い。農業を通した人生経験の豊かさをもって、軽やかでユーモラスでもあり、深刻で皮相でもある。不思議に味わいがあって、詩集なのに面白く読まされてしまう。この作者だからこその個性の面白さである。

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