槙原敬之さんの訴え認め松本零士さんに賠償命令について
作詞した歌詞が漫画「銀河鉄道999」からの無断使用だと決めつけられ、名誉を傷付けられたとして、歌手の槙原敬之さん(39)が漫画家の松本零士さん(70)に2200万円の賠償などを求めた訴訟で、東京地裁は26日、220万円の支払いを命じた。清水節裁判長は「松本さんの表現に頼って歌詞を作成したとは認められない」と述べた。
槙原さんが人気デュオCHEMISTRY(ケミストリー)に提供した「約束の場所」の一節で、「夢は時間を裏切らない、時間も夢を決して裏切らない」との歌詞があり、松本さんはテレビ番組で「漫画の『時間は夢を裏切らない、夢も時間を裏切ってはならない』というセリフの無断使用だ」などと非難。「槙原さんが『どこかで見聞きし、記憶に残っていたのかもしれない』と電話で謝罪した」と発言していた。
判決は、槙原さんの電話について「漫画の表現を知らなかったことを謝罪したもので、依拠を認める発言ではなかった」と判断し、松本さんの発言は名誉棄損に当たると結論づけた。
こういう結果になったものの、松本氏の詩句は平凡ではない。この詩句が事前になかったら、槙原氏の詩句は生まれていなかったような気がする。
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温故知新の詩句の一例
「錆びたナイフ」= 作詞 萩原四朗・作曲 上原賢六。唄 石原裕次郎 ではこうだ。.
砂山の砂を 指で掘ってたら まっ赤に錆びた ジャックナイフが 出て来たよ どこのどいつが 埋(うず)めたか 胸にじんとくる 小島の秋だ
それに対し、石川啄木(1886~1912)の詩集「我を愛する歌」 ではこうであった。
いたく錆しピストル出でぬ 砂山の 砂を指もて掘り手ありしに
ひと夜さに嵐来たりて築きたる この砂山は 何の墓ぞ
砂山の砂に腹ばい 初恋の いたみを遠くおもひ出ずる日
☆啄木が人に知られたのは、死後50年を経てからであった。時代に恵まれなかった詩人だった。
「思えば遠くへ来たもんだ」歌手:海援隊 作詞:武田鉄矢 作曲:山木康世 ではこうである。
思えば遠くへ来たもんだ 故郷離れて六年目
思えば遠くへ来たもんだ この先どこまでゆくのやら
それに対し、中原中也(1907~1938)「頑是ない歌」 ではこうなっている。
思へば遠く来たもんだ
十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた
汽車の湯気は今いづこ
雲の間に月はいて
それな汽笛を耳にすると
しょう然として身をすくめ
月はその時空にいた
それから何年経つたことか
汽笛の湯気を茫然と
眼で追ひかなしくなつていた
あの頃の俺はいまいづこ
今では女房子供持ち
思えば遠くへ来たもんだ
この先まだまだ何時までか
生きてゆくのであらうけど
生きてゆくのであらうけど
遠く経て来た日や夜の
あんまりこんなにこいしゆては
なんだか自信が持てないよ
☆こうして先人天才たちの言葉は大衆の中に伝えられてゆく。
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