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2008年12月 1日 (月)

文芸同人誌「文芸同人・長崎の会」第3号(東京都)(2)

【「鰤と鉄」秋田しんのすけ】
 コーヒーショップで、会計とコーヒーを作る蓮田という男。アルバイトの女子店員のなかに、ジョギングを趣味とする女の子がいて、その女店員を好きになるが、交際を申し込む手立てがない。すると、彼女がジョギング中に足を捻挫したという噂を聞いて、見舞いに行くと、見知らぬ若い男が先に来ていた。本誌3号は「グルメ・食」の特集で、前回紹介した岸知宏作品や次に紹介するあきらつかさ「糠床一代記」も同じテーマを課して書かれたものである。
 その意味で、どの作品もなかなか器用で、作家的な視点と手腕を持っているようだ。少なくとも起承転結をもってまとめる点でそつがない。なにを書いても、水準があるレベル以下にならない、というのは、頼もしいところがある。ただ、ライトノベルの読者層のことを知らないので、なんとも言えない。普通の小説読者としては、ホットコーヒーを頼んだら、そこそこの味のもの出てきたという感じで、旨いコーヒーとは言えないが、無難な味といったところがある。

【「糠床一代記」あきらつかさ】
 これは亡くなった祖母が、嫁に死に際に「ぬか」といったかいわないか、の話題から、嫁が姑の残した糠床を利用して、漬物を作るとこれがなかなか旨い。そうした話から、祖母の青春時代の過去がわかってくる、という仕組みの話。これは面白かった。特に、さまざまな素材の漬物の味わい、風味を文章で表現するところが、読むことへの快感を引き起こす。文学的な味というより、コピーライター的な風味があって、楽しめる。楽器の音色の表現などもそうだが、結構表現が単調になりやすいし、簡単ではだめで、かといって書きすぎてもいけない。やや突っ込んで、さっと引き上げるコツがむずかしいところだが、そこを楽しませるのは、たいしたものだ、とピントはずれに感心させられた。

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