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2008年12月21日 (日)

同人誌「婦人文芸」86号(東京)

【「幸せのかたまり」菅原治子】
 左枝子は結婚して3年目になるが、子供ができない主婦である。東京の都心に住んでいたのが、結婚して、横浜の丘陵地帯の開発地の1戸建てに住むが、本人も身内も、都落ちした気分になる。
 彼女は2人姉妹で、姉の高子は、養子をとり、父親の会社の後継となった。三年前に、左枝子が結婚すると、大きな家に母一人で住むのは不経済だからと、姉夫婦が今まで住んでいたマンションを売り、母親の実家を相続し母親と同居。左枝子には父の遺産として、横浜に小さな庭付きの建売住宅を買ってくれた。と、あるのだが、後半になるとローンを払っていることになるので、つじつまがあわないところがある。
 それはともかく、庭付きの家を買ってもらったということがわかると、昔の同級生が金を借りにきて、返してくれない。そこに、姉が引っ越すので、母親を預かって欲しいといってくる。抵抗感があったが、引き取る。すると、母親との同居生活はなかなか大変なことになる。
 こうして、肉親の感情的で、身勝手な論理の、うっとうしいやり取りが、細かく描かれる。女性でなければ書けないところである。悪人ではなく、根が善人で身勝手な肉親の表現は抜群で、男には読んでいて苛立つところがある。
 そのなかで、左枝子が、そうした女同士のやりとりや駆け引きに負けると、夫が優しく支えてくれる。彼女はそうした夫に愛情が高まり、夫婦の仲が濃厚になる。そのせいか、妊娠していることがわかる。女同士の世界を描いて、興味をそそりながら、タイトルのように、うまく予定調和的なハッピーエンドでまとめている。

【「公園のベンチ」淘山竜子】
 「夏にランニングをするのは、容子のこの数年の習慣だった。」こうした表現から小説ははじまっている。短編であるから、このはじまりが意味することを、読者は予感として受け取ろうとする。それから東京郊外の公園を舞台に、35度を超える真夏日に、ジョギングしている最中に見た風景を描いていく。そして別の日の真夏日に、また走る。後半部では、児童虐待をしてしまう親の話を聞く。その社会現象は、しかし、容子にはあまり関係がなさそうだ。真夏の昼にジョギングをするくらいなので、容子に自虐的な心理があるのだろうが、年を重ねても成熟しない女性を描いたようでもあり、謎解きのような作品に読めた。

【エッセイ「書くためにすること」河内和子】
 20年前に英米小説の翻訳家であった作者が、出版社から新しい小説の依頼を受けたが、自分の文章表現力をもっと磨こうと思う。そこで、横浜の朝日カルチャーセンターのセキカワ・ナツオ先生と、ヤマグチ・ブンケン(フミノリ)先生の指導を受ける。書いたものの添削をそのまま記録しているのが、実際的で面白い。作者が指摘された添削の箇所を読むと、自分も同じツメの甘さを始終していることに気づき、大変参考になった。反省して、気をつけよう。

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