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2008年12月20日 (土)

同人誌「海」67号(福岡市・海図出版)

 【「我らの行方」赤松健一】
会社の経営者たちの権力闘争における栄枯盛衰の物語。大阪の中堅設備工事会社・五光電設は年間売り上げ65億円規模。社長の西脇は、経理部員から社長に成り上がったやり手経営者である。株主は創業者の息子の根岸相談役である。
 西脇は根岸のお気に入りの杉山が次期社長を狙っており、近いうちに自分が退任させられることを自覚している。ある日、根岸から呼び出され、彼が財テクに失敗し、東京のひとまわり大きい会社、東日設備に株式を売却し、買収に応じたことを知らされるところから話がはじまる。すると、次期社長を約束された、杉山は買収された会社の社長となるしかなく、経営者としての権力は、親会社の下でしか発揮できない。また、系列関係の根強くある取引先にも影響が大きい。
 多視点の三人称小説で、登場人物が次々と現れ、社内の地位をめぐって出世争いの勝者と敗者の駆け引きが展開される。歯切れの良い、ストーリーテラーらしいスピードのある文章で、ぐいぐい読者を引っ張ってゆく。かなり長いものであるが、読み進めるうちに、五光電設をめぐる人間模様のなかに、会社という組織にかかわる仕事人間の生態を象徴的に描いているように、読めてくる。入れ替わり立ち代り現れる人たちが、ながながと会社人間的な哲学を述べるあたりに、サラリーマン化した日本人の一つの典型を見出すことができる。
 会社の業務上の繋がりなど、手堅く説得力をもって描かれ、面白く読み通せる。文芸的な味わいも随所にあり、単純な読み物から抜け出た品位を感じる。

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