同人誌「海」67号(福岡市・海図出版)(3)
【「曙光」有森信二】
神経質な妻と病気がちの息子と「私」の三人の家族。犬がなかなか生活になじめず吠える。しかし、息子は気に入っている。一戸建ての家に住むが、犬が吠えることで近所との交際に気をつかう。
読んでいても、神経が痛むような緊張感が付きまとう筆致である。この作者の単行本「火の音」(花書院)のなかの同名小説と、「タイム・スクリーン」を読んでいる。この2作では自己からの離脱願望や、人間の多面性を描くのが得意のような気がした。短編「曙光」からは、社会や家族の閉塞性を意識しているような気がした。俳句も掲載しているが、そのせいか、言葉の構築の洗練度の高さを感じさせる。
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