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2008年12月12日 (金)

同人誌「奏」2008秋(静岡市)17号

 発行者の勝呂奏氏は、さきに亡くなった作家・小川国夫によく傾倒していて、小川氏の年下の友人か弟子のような関係なのか、ほかの文芸雑誌などの書いた追悼記などが特集のように掲載されている。
【「還りなん」小森新】
 入院していた母親が危篤状態になって、病院へ通う日が続き、そして亡くなるまでを、「俺」の立場で描く。母親は、父親の後妻に百合子という中学生を連れ子してやってきた。継母である。しかし、「俺」には優しくしてくれた。義理の妹の百合子は、「俺」を慕っていたが、成人して間もなく自殺してしまう。そのときの母親の心境はどうであったか、母親や百合子の人生と、俺との係わり合いが、葬儀の風景を描くなかに、文体の裏側に表現されている。本当の肉親の葬儀のような悼ましさがにじみ出て、自分のことのように感情移入ができる。よくいう、身につまされるというものだ。継母ではあるが、肉親の病死を描いて、味わいのある筆致がよく活きていると感じた。

【評論「川端康成『招魂祭一景』ノート」勝呂奏】
 横光利一ともに、新感覚派の川端康成の作品を論評し、その根底にチェーホフ「ねむい」、正宗白鳥「玉突屋」、志賀直哉「剃刀」などの作品と共通の主題があり、若い娘のよるべのなさ、を通して、哀しい孤独が表現されているとする。自分はこの作品を読んでいないが、引用された作品部分から、川端の群集のなかに垣間見る乙女の美、埃のなかの女肌の美というもの対する嗜好の強さを感じた。この評論でも、群集のなかにいて、彼の世界は自分の視線と対象となる女肌に絞られる。川端の乙女の美への耽美的な嗜好が読みとれる。

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