野間文芸新人賞・津村記久子さん「受賞詐欺」かと…
受賞決定の一報を受けた時、「“受賞さしてあげる詐欺”みたいのかな、と思った」。第30回野間文芸新人賞に『ミュージック・ブレス・ユー!!』(角川書店)が決まった作家の津村記久子さん(30)が、記者会見で戸惑いを見せたのには訳がある。
受賞作は、音楽が大好きな高3の女の子アザミの生活を丁寧に描く青春小説。だが、本人いわく「女の子がダラダラしているだけの話」とも言えるからだ。「本になるとも通用するとも思っていなかったので、今ここにいることがとても不思議です。アザミは何にも達成しないし、ロマンスもなければ妊娠もしない。でも私は、何もしない、何も持っていないことを肯定する小説が書きたかった」
選考委員の松浦理英子さんは「単なる青春小説ではない。日常を、社会を、もっと大きな視点で描いている」と高く評価した。
太宰治賞で3年前にデビュー。会社勤めの傍ら、働く女性の生活感に根ざした小説を書き、最近2回の芥川賞で連続して候補になっている。
『宿屋めぐり』(講談社)で野間文芸賞に決まった町田康さん(46)と同じ、大阪・今宮高校の卒業。会見場で、同新人賞の選考委員でもある大先輩と対面し、感激の面もちだった。(08年11月25日 読売新聞)
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