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2008年11月23日 (日)

三国志 新刊や新装刊行相次ぐ

 三国志最大の山場・赤壁の戦い(208年)から今年で1800年――。その世界を描く映画「レッドクリフPart1」が公開されたのを機に、新刊本、新装本の刊行が相次いでいる。ストーリーさながらに、本の世界も群雄割拠の様相を呈し始めている。(鷲見一郎)
 まず筆頭にあがるのは、日本人の三国志観の基になり、ほかの作家にも大きな影響を与えている吉川英治『三国志』(講談社文庫)だ。全集の吉川英治歴史時代文庫(『三国志』は全8冊)とは別に、先月、新装本計5冊を刊行した。
 吉川文庫が1冊ずつ本の厚さをそろえるため、一定のところで区切っていたのに対し、新装本では、吉川英治自身の巻分けに従い、10巻の構成を2巻ずつまとめた。波乱に巻き込まれる劉備(りゅうび)の姿などを生き生きと描いているのが魅力だ。
 また、現在連載中の宮城谷昌光『三国志』(文芸春秋)も単行本に続き、10月から文庫化され始めた。宮城谷本では、動乱のきっかけとなった後漢末の黄巾(こうきん)の乱からでなく、後漢朝の乱れの原因となった宦官(かんがん)が重用される経緯から書き起こす。後漢書、資治通鑑(しじつがん)などの史書に基づきながら、宮城谷ワールドを築いている。
 一方、剣豪小説の名手・柴田錬三郎の『三国志 英雄ここにあり』(ランダムハウス講談社)も9月に新装刊行された。あまたの豪傑たちが縦横無尽に活躍する。ほかにも、陳舜臣、北方謙三、安能務(あのうつとむ)ら、多種多様な三国志がある。
 日本における三国志の特徴は、前半が曹操(そうそう)、後半が諸葛亮(しょかつりょう)の活躍を軸に描かれている点。曹操を悪役(ヒール)とし、劉備を中心とする中国とは一線を画している。明代の羅貫中(らかんちゅう)の書いた三国志演義を、江戸時代に日本語訳した湖南文山(2人によるペンネーム)の『通俗三国志』が大きく影響を与えており、吉川本もこの『通俗三国志』をベースにしているという。
 もともと三国志には、陳寿の書いた、正史としての三国志と、講談調の三国志演義とがある。一般に三国志という場合、だいたい演義のことを指している。
 80年代にNHKで人形劇が放映され、その後、ゲームやマンガでも扱われる。それらの効果で大人の読み物だった三国志の読者年齢層が下がり、小中学生にも幅広く親しまれるようになった。さらに今年は、4択で知識を問う三国志検定も行われる。
 内容をほとんど変えていない新装本でも、これだけ愛される三国志の秘密はどこにあるのだろうか。三国志を専門とする渡辺義浩・大東文化大教授は「判官びいきの日本では、結局、蜀が勝たないという滅びの美学がうけている。話の基本形がしっかりしているから、多メディアで応用が利く」と分析している。
 検定の申し込みは24日まで (ホームページhttp://www.3594kentei.com/)。(08年11月19日 読売新聞)

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