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2008年11月27日 (木)

文芸同人誌「砂」第108号の作品を読んで(2)=中村治幸

【エッセイ「ヴェネチア慕情」望月雅子】
 望月さんの母親が「ベニスの舟歌」という歌を口ずさんでいた。それを幼いころ聴いていて、物哀しいロマンチックな街を夢に描いていた。成人してベニスを舞台にした映画を見たり、知人の娘さんがベニスの青年と恋をし結婚して、その国に行ったという話を聴くと急に身近な国に感じた。こうして望月さんにとってベニスが憧れの土地になっていく。だが残念なのは病床にあってゆきたくても行けない場所であることだ。だが夢みているだけでなく、NHKのBSで放映されているのを、繰り返し目を凝らして視聴し、街のさまざまなようすを瞼に焼き付けているというのが凄い。それがため、この作品を読んでいると、あたかもヴェネチアを旅しているかのような、臨場感にひたることができる。望月さんの想像力の素晴らしいところだ。ベニスを舞台にした映画を見たくなった。
【紀行文その二「佐渡北端を行く」木下 隆】
 気にいった箇所はP45上段五行から十一行目の、「欲張って、本など、あまり必要でないものまで詰め込んでしまった私のナップザックは、歩くに連れてその加重を増し──身体の方は嘘をつかない。腰骨がひどくいたむ」という場面だ。こういう本好きな木下さんにして、かつ文章を書き込むことができるからこそ、このような作品ができるのである。魅力的な作品だ。遠回りの道が内容に緊張感を与え、面白味を加え、旅行にひときわの印象を残したのではなかろうか、民宿よしや、に着くまでの行程がミステリアスだ。
 さてようやく民宿に着くと、そこのおかみが木下さんの母親に似た感じだったり、環境省の「日本の海水浴場百選」に選定されていたり、さいの河原にゆく道中、といったところに行ってみたい気がそそられる。ましてや日本海に沈む真っ赤な夕日や、真夜中に目覚めて見た満天の星の様子はその極めつけであろう。(「砂」会報より)

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