同人誌作品紹介「胡壺・KOKO」第7号(福岡市)(3)
【「爺さん」磯野ひじき】
オレが福岡から故郷の島に帰ってみると、母親が見知らぬ爺さんと暮らしている。大柄で体格の良い母親にくらべ爺さんは小柄で貧弱である。誰かと訊くと、2度目の父さんであるという。オレの本当の父親はすでに亡くなっている。爺さんは65才で、島に観光にきたのだろうか、途中で夏の暑さに当って行き倒れしているところを、母親に助けられたという。ノミの夫婦で母親と仲良くしている。オレは、福岡で3人の彼女と同時交際していた。人類すべてを愛してしまう傾向にあるらしい。
方言が正統派的で、整理してあってよい雰囲気を出している。短いが文句なしに面白く読める。ただ、物語の構造からすると、母親とオレは人類愛豊かであるところが、筋が通っているが、オレの彼女たちとの間が破局的になったままのように扱われているのが、バランスが悪い。3人の彼女の誰かが、ほかの2人を出し抜いて、オレへの愛の獲得に動く気配があれば、母親と爺さん、オレと彼女というバランスがとれて安定した構造になるように思う。
【「アニキ」鰺沢圭】
ライトノベル小説で、高校の運動部の応援団長の男らしさに、入れあげてみたら、同部の男子生徒と良いなかになっていた、というオチのある話。やおい系(ヤマなし、オチなし、イミなしの同性愛的な物語)だが、ヤマもオチもイミもあるので、ライトノベルになのではないか、と思う。
【「資源管理型麻雀」鰯藤悟朗】
阿佐田哲也なみの、麻雀パイ図入りで、ゲームの成り行きが表示される。何が資源管理型なのかと思ったら、資源であるカモを、根絶やしにせずに、海の漁獲量管理のように、収穫調整しようという話で、ミイラ取りがミイラになる話。面白いが、なんとなく前述と同じ作者の風味を感じる。
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