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2008年10月31日 (金)

詩の紹介 「あやかしの胡蝶の木」から 作者・原 満三寿

(紹介者 江素瑛)
トイレに飾ってある鴨の俳画を、気持ちよく用を足しながら目の保養。狭い空間になんと贅沢な時間があるのだろう。そして場所は上野の不忍池に移る。江戸時代に琵琶湖を見立てて作られた不忍池だが、茂った笹、出会い茶屋、よく男女の逢引に利用された場所かもしれない。はるか昔、庶民の場でもあった森を、庶民に返す「恩賜公園」の名は、確かに違和感を持つ人もいるであろう。しかし、神代の時から連なる大君の、民衆を愛す心を素直にいただく民衆もいるであろう。いずれにしても野鳥たちと自然体に融和できるなら、場所の名前はどうでもいいことかもしれない。

「 あやかしの胡蝶の木  其の壱 厠から恩賜公園へ 」       原 満三寿

わが陋居のトイレで大きい方の用をなすものは/ どうしても壁にかざった俳画をみることになる/「厠にて鴨の着水考える」のわが腰折れに彩墨俳人の浅尾靖弘さんが/画面にあふれるほどの表飄逸な鴨を描いてくれたもの/ 用をすませた客人が/けっこうなものでげすな/ などと世辞をいうこともある/ さんざんみられた俳画なのだが/ 世間より十年ほど遅れて世帯をもった次男がいなくなると/ なぜかにわかに鴨の着水がみたくなって/ 上野の不忍池にきてみた
だがついたとたん不快になる/ <上野恩賜公園・不忍池>の名称が江戸っ子じゃねえが気にいらねえ/ 「恩賜」たなんだ/ 天皇から下賜されたものをさすことだろう/ 公園ばかりじゃなく恩賜林なんてえのもある/ いつから公園や林が天皇のものになってたのかい/ 「下賜」たぁなんだ/ ほんらい君主から家臣がものを拝領することだ/ するてえとおれたちは天皇の臣下かい/ ざけんじゃない 不快/ と まず加齢難癖をぶつぶつ
「騒」第75号より(08年9月 騒の会 町田市本町田)

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