文芸時評10月(毎日新聞10月27日)川村湊(文芸評論家)
《対象作品》中村文則「なにもかも憂鬱な夜に」(「すばる」)/新潮新人賞・飯塚朝美「クロスフェーダーの曖昧な光」「新潮」)/すばる文学賞・天埜裕文「灰色猫のフィルム」(すばる)/青山七恵「かけら」(新潮)。
《対象作品》中村文則「なにもかも憂鬱な夜に」(「すばる」)/新潮新人賞・飯塚朝美「クロスフェーダーの曖昧な光」「新潮」)/すばる文学賞・天埜裕文「灰色猫のフィルム」(すばる)/青山七恵「かけら」(新潮)。
(紹介者 江素瑛)
トイレに飾ってある鴨の俳画を、気持ちよく用を足しながら目の保養。狭い空間になんと贅沢な時間があるのだろう。そして場所は上野の不忍池に移る。江戸時代に琵琶湖を見立てて作られた不忍池だが、茂った笹、出会い茶屋、よく男女の逢引に利用された場所かもしれない。はるか昔、庶民の場でもあった森を、庶民に返す「恩賜公園」の名は、確かに違和感を持つ人もいるであろう。しかし、神代の時から連なる大君の、民衆を愛す心を素直にいただく民衆もいるであろう。いずれにしても野鳥たちと自然体に融和できるなら、場所の名前はどうでもいいことかもしれない。
☆
「 あやかしの胡蝶の木 其の壱 厠から恩賜公園へ 」 原 満三寿
わが陋居のトイレで大きい方の用をなすものは/ どうしても壁にかざった俳画をみることになる/「厠にて鴨の着水考える」のわが腰折れに彩墨俳人の浅尾靖弘さんが/画面にあふれるほどの表飄逸な鴨を描いてくれたもの/ 用をすませた客人が/けっこうなものでげすな/ などと世辞をいうこともある/ さんざんみられた俳画なのだが/ 世間より十年ほど遅れて世帯をもった次男がいなくなると/ なぜかにわかに鴨の着水がみたくなって/ 上野の不忍池にきてみた
だがついたとたん不快になる/ <上野恩賜公園・不忍池>の名称が江戸っ子じゃねえが気にいらねえ/ 「恩賜」たなんだ/ 天皇から下賜されたものをさすことだろう/ 公園ばかりじゃなく恩賜林なんてえのもある/ いつから公園や林が天皇のものになってたのかい/ 「下賜」たぁなんだ/ ほんらい君主から家臣がものを拝領することだ/ するてえとおれたちは天皇の臣下かい/ ざけんじゃない 不快/ と まず加齢難癖をぶつぶつ
「騒」第75号より(08年9月 騒の会 町田市本町田)
昨年4月に創設された、「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」1回受賞作は、松本寛大さんの「玻璃の家」に決定。作者の松本寛大氏は、1971年北海道生まれ、札幌在住。
島田先生選評(抜粋)
「一読、この作品はもう充分に傑作の領域にあると感じて、このような高度で緻密な本格ミステリー作品が、福ミスのような地方の小賞に投じられてきたことに感謝した。本賞受賞作は、この作以外にはないであろう。」
松本さん受賞コメント
「今回の受賞を本当に光栄に思っています。島田先生・羽田市長をはじめ、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の実行にたずさわった関係者の方々には感謝の言葉もありません。私のつたない作品が福山市の発展のために少しでも寄与できれば望外の喜びです。
今後ともこの栄誉に対するせめてもの恩返しとなることを信じ、受賞者の名に恥じない作品を書けるよう精一杯努力し続けたいと思います」
受賞作の出版は2009年3月(予定)
作品は今後、島田先生の指導のもとに推敲され、2009年3月に講談社から発表される予定。すでに傑作の域にあるとまで言われるこの作品が、さらに磨きをかけられて世に送り出されることになる。
優秀作「罪人いずくにか」(水生大海)
今回は応募作品のレベルが高く、島田先生のご要望もあって、特別に「優秀作」として水生大海(みずきひろみ)さんの「罪人いずくにか」が選ばれた。出版が前提ではありませんが、来年3月の表彰式には水生さんもご招待する予定。
(文化部 山内則史記者) 携帯さえあれば話せる。便利な道具を手にした反面、現代人はじかに話し、接触する「直接性」から遠ざけられている。今月は文芸誌3誌に新人賞が出そろったが、文藝賞の喜多ふあり氏(28)「けちゃっぷ」(文藝冬号)は、そんな時代の感触をよく伝えている。
親の仕送りで暮らすニートの女性〈私〉は、3か月誰とも話さず、自分の考えや妄想をひたすらブログに書いている。〈私〉のブログにコメントを書き込んだヒロシが目の前に現れても、会話はブログを介して。〈私〉には、テレビの中もネットの中も現実の世界も、〈自分との距離が等間隔の同じ一つの世界〉としか感じられなくなっている。
ヘラヘラ笑いのブログ文体で疾駆するこの小説の、ある種のばかばかしさの中で、世界の速度を停滞させるかのような映像のもたらす重苦しい不安が、〈私〉にも読者にも、一段と切実に迫ってくる。
「野ブタ。をプロデュース」でデビューした白岩玄氏(25)は、4年のブランクを経て受賞第1作「空に唄う」(同)を書いた。23歳の僧〈海生(かいせい)〉と、病死した同い年の女性の霊との交流と別れを描くゴースト・ストーリー。その女性の通夜の席で、住職である祖父の脇で経を上げた海生は、死んだはずの彼女の姿を棺の上に見る。見えているのは海生だけ。自らの死を実感できない彼女には、海生と自分の声以外に音が聞こえない。
リアルな感覚から大きくはずれていかないのは、ネットやゲームの仮想世界と現実が併存する現代と、あの世とこの世がつながっている小説世界が、似通っているからかもしれない。バーチャルとリアルを行き来することは、現代に生きる人々には日常になっているのだから。
今月は、親子関係を見据えた秀作が目立った。津村記久子氏(30)「ポトスライムの舟」(群像)は、昼間は化粧品工場のライン労働、夜はカフェで給仕のパートとデータ入力の内職、土曜はパソコン講師といささか働き過ぎの30歳前の独身女性が主人公。母親と住む奈良の古い大きな家に、離婚騒動で学生時代の友人が幼い娘連れで転がり込んできたことから、やがて働くことに縛られた生活に変化が兆す。工場の同じラインの同僚など、市井の人々の生活の根っこにまで届いている作者の目線は細やかで、そこから暮らしのにおいが立ち上ってくる。
父と娘の隔靴掻痒(かっかそうよう)の感情を巧みに切り取ったのは青山七恵氏(25)「かけら」(新潮)。父とふたり、サクランボ狩りの日帰りツアーに参加するはめになった20歳の大学生が、まともに話したことのない父との気詰まりな時間の中で、これまで目にしたことのない、愛想のよい父の顔を発見する。親子ではあるが他者でもある肉親という存在の両面性を照らし出す上で、カメラという小道具が利いていた。
磯崎憲一郎氏(43)「世紀の発見」(文藝冬号)では、石油掘削設備の技術者として海外でも長く働いた中年男が、少年時代の不思議な出来事を思い起こし、親にとっては子供の存在だけが〈人生の時間を現実に繋(つな)ぎ止めておく担保〉になっていることに思い至る。デビュー作「肝心の子供」にもあった、脈々とつながっていく命の連続性への意識が、小説の時間の中でゆったりと息づいていた。(文化部 山内則史)
「読売ウイークリー」は、 12月1日発売の同14日号で休刊する。同誌は1943年5月に「月刊読売」として創刊。52年に「週刊読売」に誌名変更し、週刊化した。2000年に「Yomiuri Weekly」に、05年に現在の名称になった。新聞社系の週刊誌の草分け的存在だったが、最近は発行部数約10万部。販売不振と広告収入の減少、コスト増などで65年の歴史に幕を閉じることになった。
小学館は29日、幼児向け月刊誌「マミイ」を来年1月31日発売の3月号を最後に休刊すると発表した。少子化に伴う発行部数の減少が理由としている。「マミイ」は0~2歳児を対象とする幼児誌で、1972年2月創刊。最盛期の84年には約24万5000部発行したが、最新号は約10万部に落ち込んでいるという。(08年10月29日 読売新聞)
ZAKZAK(産経デジタル)と扶桑社が共同で実施、本年4月1日から7月30日まで公募した第一回ヴィーナス小説大賞の選考結果が決まった。佳作10点は扶桑社より各電子書店を通じてケータイ向け書籍として11月末より順次発売(予価1点税抜き100円)の予定。
選考結果=《大賞》(1点) 該当作なし。《優秀賞》(1点) 該当作なし。
佳作(10点) 「蜜の夢」(吉原 杏)/「忘れられないアバンチュール」(市川 しんす)/「プライベートビデオ」(牧村 結)/「トラック・トリップ」(新崎 もも)/「ほしい。」(カオ)/「淫らな声が響く日」(七瀬 椋)/「秘密の診療室」(青田 プラザ)/「チャットレディの午後」(永野 かおる)/「もぎたての柚子はいかが?」(華岡 紫陽)/「カップリング」(あゆはら ゆうき)。
政府は28日、2008年度の文化勲章受章者8人と文化功労者16人を発表した。文化勲章の受章者には、数学の伊藤清(93)、指揮の小澤征爾(73)、ともに素粒子物理学の小林誠(64)、益川敏英(68)、海洋生物学の下村脩(80)、小説の田辺聖子(80)、日本文学のドナルド・キーン(86)、スポーツの古橋広之進(80)の8氏が選ばれた。
文化勲章受章者は文化功労者から選ばれるため、ノーベル化学賞の下村氏は今回、文化功労者も顕彰される。
キーン氏はニューヨーク市出身の米国人。外国籍での受章は、今年のノーベル物理学賞受賞者で米国に帰化後に受章した南部陽一郎氏(1978年)、アポロ11号で月面着陸に成功したアームストロング船長ら3人(69年)の例がある。元競泳自由形の選手で日本オリンピック委員会会長も務めた古橋氏は、運動選手としては初の受章。
文化功労者は、発生生物学の浅島誠(64)、生物有機化学・応用分子細胞生物学の磯貝彰(66)、作曲の一柳慧(75)、工芸の奥田小由女(71)、俳句の金子兜太(89)、電子工学の榊裕之(64)、応用物理学・学術振興の霜田光一(88)、彫刻の澄川喜一(77)、経済社会学・社会変動論の富永健一(77)、情報工学・学術振興の長尾真(72)、言語学の西田龍雄(79)、狂言の野村萬(78)、バレエの牧阿佐美(74)、作曲の船村徹(76)、歌舞伎の中村富十郎(79)の各氏。
《対象作品》座談会=柄谷行人・黒井千次・津島裕子「『蟹工船』では文学は復活しない(文学界)/対談=原武史・秋山駿「団地と文学」(群像)/天埜裕文「灰色猫のフィルム」(すばる文学賞受賞作)/飯塚朝美「クロスフェーダーの曖昧な光」(新潮新人賞受賞作)/喜多ふあり「けちゃっぷ」(文藝賞受賞作)/安戸悠太「おひるのたびにさようなら」(同)。
《対象作品》「命根」相馬庸郎(「AMAZON」431号/宝塚市)、「現人神」諸知徳(「あてのき」34号/金沢市)、「くたばれ忠臣蔵」逆井三三(「遠近」35号/練馬区)、「庄屋の職分―摂津国高浜村・押領吟味一件」穂積耕(「法螺」59号/交野市)、「桃の花びら」武野晩来(「青稲」81号/松戸市)、「見る聞く歩く学ぶ―江戸」野村敏雄、「上野のお山」郡順史(以上「八百八町」8号/板橋区)、「闇の森心中」湯本明子(「文芸シャトル」63号/豊田市)、「迦陵頻伽」大掛史子、「巣林一枝」山本十四尾(以上「墓地」63号/古河市)、「フォールアウト」伊藤眞理子、「記憶」河野洋子、崔龍源(以上「COALSACK」61号/板橋区)、「国の歩み」下川浩哉(「九州文学」525号/中間市)、「葦の地帯」千早耿一郎(「騒」75号/町田市)、「十五歳の夏」天路悠一郎、「武田隆子さんはかけがえのない詩人であった」菊田守(以上「花」43号/中野区)、「出征の日が初対面往きしまま耳不自由な年嵩の従兄」滝口悦郎(「未来」680号/中野区)、「被爆者の手記に報復の記録なし深き悲しみを思はざらめや」矢野伊知夫(「新アララギ」11巻9号/千代田区)、暮尾淳、瀬山由里子、中里夏彦(以上「鬣」28号/前橋市)、特集「あの俳人の今」(船団」78号/箕面市)、「春はいいですね……」武田隆子(「りんごの木」19号/目黒区)、石鍋トリ追悼(「荒栲」3巻5号/台東区)、高橋徹追悼(「GAIA」25号/豊中市)、中西泰子追悼(「塔」644号/左京区)。「文芸同人誌案内」掲示板よこいさんまとめ)。
読売新聞社が4~5日に行った全国世論調査(面接方式)によると、この1か月間に本を1冊以上読んだ人は54%だった。
昨年の48%を6ポイント上回り、本に親しむ人の割合は高まった。
本を読む理由(複数回答)は「知識や教養を深めるため」47%(昨年比8ポイント増)、「面白いから」32%(同1ポイント減)、「趣味を生かすため」27%(同3ポイント増)――などの順で多かった。知識や教養を身につけることを目的に本を読む人が増えたことは、最近の教養新書ブームを反映したものともいえそうだ。
本の選び方(複数回答)は「書店の店頭で見て」49%が最も多く、「ベストセラーなどの話題をきっかけに」「新聞の書評を読んで」各25%などとなった。
「子供のころに本を読む習慣を身につけることは大切だと思う」と答えた人は97%に達した。本を読むことの良い点(複数回答)では「知識が豊かになる」65%、「想像力が豊かになる」54%、「物事を深く考える力がつく」50%が目立った。(08年10月26日 読売新聞)
【「立ちつくす季節」堀井清】
堀井氏の作風は、文学的な気風に満ちた独自の表現性をもつ。ちょうど、音楽がつくりあげる時間の雰囲気を味わうように、読書する時間のなかに一つの雰囲気を作り上げるのである。雰囲気小説とでもいうのだろうか。作品のなかにもオーディオ装置の話が出てくる。ここで聴く音楽は、ラジオカセットやipodではいけない。ハイファイコンポーネントで、コンサートホールを上回るような、楽器の切れ味が、良くあじわえる装置でなければならない。
主人公は、オーディオルームで独り、古今の名曲に聴くような、やや憂鬱症の男のタイプである。加齢による頻尿に睡眠がよくとれず、老妻と認知症になっているかどうかが、夫婦の話題になる高齢者である。息子夫婦と孫と同居している。
家族で同居しているのは、独り暮らしに人からみれば、幸せそうだが、いざ当事者となればそうはいかいない。家庭のなかで、除外されるだけでなく社会から除外される存在となった立場を示し、いいしれぬ孤独感をもっている。
過去の罪深い行為と、思い出さずにはいられない恥辱感が、思弁の展開をともなって語られる。何十年も生きているから、そのタネには困らない。後半では、調子を変えた2人称で、店のアルバイトの店員に採用して欲しいと申し入れるが、老齢を理由に断られるエピソードがあり、ついに店員から「あんた死臭しているよ」といわれるまでになる。若いときは、仕事の束縛から自由になりたいと切に願ったはずである。現在はその束縛を求めて仕事につきたいと願うが、それもかなうことがない。アウトサイドに立った人間の孤独を描いて終わる。自分なども社気的な存在の希薄となる昨今、これから自分は、どのような時間を過ごせばよいのか、選択の余地のない迷路のなかで、立ちつくすような思いをすることがある。読者である、自分自身にとっての問題提起と実感のこもった作品に読める。本誌には、作者の「ずいひつ~音楽を聴く」の連載があり、音楽とオーディオ装置と芥川賞作家・諏訪哲史氏の創作論に関する話がある。
【「光と影」井上武彦】
直木賞候補になった経歴をもち、クリスチャンである作者が、遠藤周作との出会い、瀬戸内寂聴との交流、文豪といわれた丹羽文雄の主宰する文芸同人誌「文学者」に執筆するなど、文学的遍歴と信仰の葛藤を描く。そのキャリアを知ると、かなりの年配であることがわかり、その力量に感嘆させられる。職業作家になる道が目の前にありながら、そこに歩みを進めなかったのは何故なのか、別の興味も湧く。
それに応えるように、瀬戸内寂聴から、作家になりたかったら「あなたは、家庭を捨てなさい。女房子供を捨てなさい。そして創作一筋に打ち込みなさい」と、諭される場面も描かれている。
文学にすべてをかける姿勢を示すことが、編集者に支持される時代であったことがわかる。スポーツ根性と同じ精神主義である。
井上氏はしかし、そうした決意というか、決断をしなければならないことに、ぴんとこない。そのときすでに井上氏が次元の異なる精神構造をもっていたことがわかる。「作家的根性」は作家になるには必要条件であるが、文学芸術的には、そうとは限らない。ただ、出世の手段としての職業作家になるという意味では、現代にも通用するとは言える。瀬戸内寂聴は、作家に出世したあとに出家してしまった。これは、作家道を歩んだ末の自然の流れかもしれない。
現代でも車谷長吉のような「私小説作家的根性」の精神構造の作家が存在する。あと何年かするとユーモア小説の作家とされるのではないか、とも思われるほど時代錯誤に満ちた作風が、人気があるようだ。笑われてなんぼの大阪芸人の雰囲気に似て、人気の理由もわかる。
それはともかく、作者は、60年安保騒動時代に労働運動のリーダーをしていたことも語り、宗教、文学、生活など、すべてが光と影の混沌のなかにあることを語る。
まさに、その混沌のなかに、総合的な文学芸術の舞台があるのではないか、そのような示唆を与えてくれる力作であった。
【「2階のマエストロ」朝岡明美】
12室ある共同住宅の住民である新婚の「私」の視点で、近所付き合いの様子が語られる。マエストロと称される住民が、ショパンという飼い犬を追って、自分が車にはねられて亡くなってしまう。なかなか退屈な話を軽妙な筆致で展開している。その軽妙さの背後に、日常生活のなかの無常観が表現されている。
【「縄文人が私を生きる」藤村文雄】
縄文時代の貝塚の発掘にかかわった若い女性が、タイムスリップして、縄文時代に入り込み、再び現在にもどる話。古代にはロマン的な想像力をかきたてる何かがあるようだ。
【「おもかげ」川口務】
主人公は若くして病弱な体質で、療養に適した土地である期間過ごす。そこで、通院する。転地療養が流行ったころであろう。病院で知り合った若い看護師と知り合い、プラトニックな愛が生まれる。そうした恋心よく表現したゴールズワージーの小説「りんごの木の下」に魅了され、その本をさがす物語。思春期の初恋は多くの人が書いているが、この作者の語りは、読む者の心をほのぼのとさせる。楽しく読ませる味のある表現力がある。貴重な資質ではないだろうか。天性のもので、人柄なのかもしれない。
泉鏡花は、江戸川乱歩やベルヌらと並んで好きな作家の一人だ。その名を冠した賞に決まり、「過去の受賞者はすごい人ばかり。僕は初の“ド素人”受賞者ですよ」。アトリエで、ちゃめっ気たっぷりに語った。
受賞作『ぶるうらんど』(文芸春秋)は、死後の世界をこの世にも似た穏やかで不思議な世界として描いた短編集。きっかけは、知り合いの編集者の「小説を書きませんか」という一言だった。「そのときはすぐ笑って断りました。でも、寝る前にふと気になって」。翌日、1編目を一気に書き上げていた。
兵庫県西脇市出身。かつてはグラフィックデザイナー、今は画家として、聖と俗、夢と現実が混在する独特の画風を確立し、世界的にも評価は高いが、昨年、「隠居宣言」。今は気持ちの赴くままに絵筆をとる。その合間につづった受賞作を、村松友視選考委員は「軽やかで柔らか。ここに今の横尾さんの精神の中枢がある」と評した。
次作について聞くと、「上手におだててくれたら、書くかも分からんよ」。古希を超えてなお少年のような笑顔を見せた。(文化部 金巻有美)(08年10月24日 読売新聞)
ブックオフは今年8月から川崎モアーズ店と渋谷センター街店で、「本のアウトレット」と銘打ち出版社の再販指定を外れた「自由価格本」を試行販売。その後、10月に開店した町田東急ツインズ店にも導入し、現在3店で実施中。さらに、11月から自由価格本コーナーの名称を「B★コレ!」に統一し、11月中に81店に導入する予定。2009年3月末までには200店での展開を目指す。11月中までに導入する店舗はすべて直営店。2009年3月末の売上げは200店で5000万円(うち直営店は3500万円)を目指す。2010年3月期には、200店で3億円(うち直営は1億円)の売上げ計画を立てている
「騒」75号(町田市「騒の会」発行)は、30頁ほどの薄いものだが、文字が小さいので、内容は濃い。しかも評論も充実し、毎号読み応えがある。書評として、坂上清「坂上清詩集」を新倉葉音が「小鳥の棲む社会派詩人の狙うところ」がある。坂上氏の詩風は、単純な素材とやさしい表現のもが多いが、それが幾重にも重ねられた寓意を含むために、じつは難解であるという特徴がある。そのなかで小鳥に託した作者のイメージとビジョンがあることを、ここで降り起こしている。その他、千早執耿一郎「慎太郎氏のイチャモン」、7月に亡くなった詩人・梅田智江さんの追悼記、暮尾淳「梅田智江さんのこと」がある。
「夜明け前」159号(北群馬郡「群馬詩人会議」発行)は、73才で農家をし、先ごろ農民文学賞の詩部門の受賞者でもある大塚史朗氏の発行。毎号「野の民遠近」を執筆し、元気である。評論・エッセイで、久保田穣「群馬における私的詩史ノート」(68)という長期連載。梁瀬和男「萩原朔太郎の郷土詩人の思い」(下)が興味深い。
「さわさわ」5号は、森本忠紀発行の「重信房子さんを支える会(関西)会報」であるが、支援者の短歌や俳句の掲載が多い。重信房子「私の京都・大阪物語(5)」がある。組織の国際部に所属したことで、パレスチナ解放運動の情報を得るまでのいきさつが記されている。国内活動のときに彼女を逮捕した刑事が、後日、検察庁にいてそれが、最近朝鮮総連の建物の取引で逮捕された緒方元検事であったという話題もある。
「新・原詩人」20号は、現代詩人文庫「坂上清詩集」(砂子屋書房)を(抄)にして特集を組んでいる。この「新・原詩人」は、井之川巨(故人)の主宰する反戦詩人グループ「原詩人」のあとを、江原茂雄氏が継承したもの。井之川氏は、その時代から、獄中の重信房子氏に発行物を送付していたようだ。生前の井之川氏は、第2回文学フリマの文芸同志会コーナーに訪れて、それから間もなく亡くなった人だ。
朝日新聞出版は21日、新しいエンターテインメント小説レーベル「朝日ノベルズ」を創設、第1弾として笹本祐一さんのスペースオペラ「ミニスカ宇宙海賊(パイレーツ)」など3冊を出版した。
「朝日ノベルズ」は、ライトノベル世代の読者をターゲットとし、SFやファンタジーにとらわれず、新しい小説を発信していく。07年9月に解散した朝日ソノラマ社を吸収した同社は「新レーベルでは朝日ソノラマのDNAを引き継ぎながら、若手作家も発掘していきたい」と話している。【渡辺圭】(10月21日 毎日新聞)
氏家篤子、荻悦子、鈴木正枝の3人による詩誌。各氏が2作づつ全作品で6作品だけが掲載されている。
萩悦子「ポゾゾル」は、地球の寒冷地の地下の存在するものに思いを馳せる。温暖化で地球が炎上しても生き残れるのか、とも想像させ、微生物的世界から宇宙にまで意識を誘う。同「翌朝」落雷の夜明けに小鳥の幼鳥が死んでいるのを見る。日常の生と死の意識を表現。
鈴木正枝「路肩」老いた病身の、孤独に思いつめた心情を描く。愛憎の情念を生きる力にかえて、どこまでも生きる。同「じかんを じかんを」我々の漂う時間は、その時々にのび縮みする。生きることは時間との戦いである。思弁的世界に引き込む作品。
氏家篤子「海の扉」朝の海の潮の香りを漂わせた光景と夕べの海の無関心さとを、人間的心情を窓をあしらって、さらりとギリシャ的に描く。同「秋」カマキリ、ドングリ、雹でも降ったのか、突然われたガラス扉。ダイナミックに秋を感じさせる。
【「羽音」松蓉】
鳥きらいな男が、嫌いなゆえに、バードウオッチングのようなことをせずには居られない男を皮肉に描く。嫌いであるという視点から繰り広げる鳥の生態のウンチクが面白い。人間の愛憎の機微を風刺に転換している。
【評論「意味の異化と無化―笙野頼子『二百回忌』論」藤田充伯】
作家・笙野頼子の作品をそれほど読んでいないので、このような視点で論評されたものは、勉強になる。恐山のイタコの呪文に似て、言葉の礫により、読み手の心理的な空白域を突いて、そこに充実感を生む手法を浮き彫りにしている。
講談社は22日、月刊のマンガ雑誌「モーニング・ツー」の1か月前の発売号をネット上で期間限定で無料公開する試みを始めた。
同誌は「モーニング」誌の増刊で06年夏から発売。雑誌の部数は約5万部で、1、2巻計100万部を超す「聖☆おにいさん」など連載作の単行本がヒットしている。しかし、雑誌の流通システムの問題もあって、都市部以外の書店では同誌を入手しにくいとの苦情が多い。そこで、今月の第15号から12月の17号まで、それぞれの発売日から1か月間限定で前号をネット上で見られるようにした。(08年10月22日 読売新聞)
日本のミステリー文学の発展に貢献した作家、評論家に贈られる第12回日本ミステリー文学大賞(光文シエラザード文化財団主催)の選考会が22日、東京都内で開かれ、島田荘司さん(60)が選ばれた。副賞300万円。
公募で選ぶ日本ミステリー文学大賞新人賞は、東京都豊島区の会社員、結城充考(みつたか)さん(37)の「プラ・バロック」に決まった。副賞500万円。
宮崎県出身の歌人、若山牧水にちなんだ「第13回若山牧水賞」(同県など主催)に21日、千葉県市川市在住の歌人、日高尭子(たかこ)さん(63)の歌集「睡蓮(すいれん)記」が選ばれた。
日高さんは千葉県出身で早稲田大卒。04年に歌集「樹雨」で第31回日本歌人クラブ賞と第14回河野愛子賞を受けた。「牧水は旅の歌や自然を詠み幼いころから親しんできた歌人。改めて牧水の世界を振り返り、私自身の新しい歌の糧にしたい」とのコメントを出した。
選考委員会は「感情表現は抑制されているものの、女性の情念は詠み込まれている。今までの女流歌人と違う傾向」と評している。
日本文藝家協会は、10月16日付で、「出版社各位」に宛てた文書を配布。アマゾンジャパン「なか見!検索」、グーグル「ブック検索」など書誌情報だけでなく本文も読めるサービスについて、「販売促進」の範疇を超えて「読了」できるレベルのものがあり、「過大な公開を避けてほしい」との意見が理事会であがっていると説明。出版社に作品掲載の許諾を出す場合にその範囲に留意してほしいと伝えるとともに、出版社によっては著作者の許諾を得ていないことも指摘し、必ず許諾を得るよう要請している。同協会によると、文書は517社に配布した。
「阿賀北ロマン賞」(新潟県新発田)2008年度作品募集
1 趣旨◆阿賀北地域の地域振興及び文学による人材発掘とアイデンティティの創造
◆年度ごとに定められたテーマを通した地域の魅力の再発見◆新しい文藝作品の創造
2 主催者等=主催:敬和学園大学新発田学研究センター、共催:新潟県新発田地域振興局 。
3 応募要領等=【小説・随筆部門】<2008年度のテーマ>◆阿賀北地域の「星空」(星空は阿賀北地域の美しい自然の象徴の一つです。)
応募方法 =・「阿賀北ロマン賞」2008年度作品募集と朱書きした封筒に作品と「応募者シート」を同封し、下記住所に郵送して下さい。
〒957-8585 新潟県新発田市富塚1270 敬和学園大学 教務係「阿賀北ロマン賞」事務局
・「応募者シート」は、この敬和学園大学新発田学研究センターホームページ(アドレス: http://i-love.shibata.jp/ )で配布いたします。応募者シートには、執筆者の氏名と連絡先、どの部門への応募なのかを記載して頂きます。
【創作童話・児童文学部門】=<2008年度のテーマ>◆阿賀北における新発田地域(現在の新潟県新発田市、阿賀野市、胎内市及び聖籠町)の一部又は全部を舞台としたもので、美しい自然の象徴である「水」(「川」、「海」、「清流」、「潟」など)です。ただし、作品の内容は現在、過去、未来は問いません。
4 応募締切=2008年11月14日(当日消印有効、応募方法は、「7 応募方法」をご覧下さい。) 5 発表=2009年2月中旬 =作品の選考結果発表は、敬和学園大学のホームページ、新発田学研究センターのホームページ、新潟県新発田地域振興局のホームページで発表させていただきます。 入賞作品の著作権・出版権(映像化権を含む。)・その他の利用権は、小説・随筆部門については学校法人敬和学園に、創作童話・児童文学部門については新潟県にそれぞれ帰属します。
6 審査員= 加藤宗哉(三田文学編集長)、 菅野由貴子(絵本作家)、新井明(敬和学園大学学長) 、目黒淳(新潟日報新発田支局長)、 神田より子(まちの駅よろず「新発田学研究センター」長) 、加藤裕悦(新潟県新発田地域振興局長、若月忠信(敬和学園大学教授) 、北嶋藤郷(敬和学園大学元教授)。
「佐々木小次郎」「次郎長三国志」などの時代小説で知られる村上元三(1910~2006)が、60年間余にわたり作品名などを書き留めたノートが、ゆかりの北区にある田端文士村記念館(田端6)が16日から開く企画展で初公開される。ノートは17冊。長女の誕生など人生の節目に関する記述もあり、作家としての軌跡とともに、人となりを知る貴重な資料だ。(児玉浩太郎)
村上は駆け出し時代の1938年ごろから田端の借家で執筆にいそしんだ。41年には「上総風土記」他で直木賞を受賞し、大衆文壇の第一人者としての道を歩み出した。45年4月13日夜、空襲で借家が焼けて田端を離れたが、この際、借家から何とか持ち出すことができたのは、両親の位牌(いはい)と万年筆、「作品目録」と題されたノートだけだったという。
ノートには作品の発表日とみられる日付と作品名、掲載誌名などが記され、41年のページには「直木賞受賞『上總(かずさ)風土記』他」などの書き込みも。直木賞の祝賀会と同じ日に長女が誕生したことなども読み取れる。
村上がつづった「作品目録」ノート。四角囲みで「直木賞受賞」と記されているのがわかる 村上が亡くなって間もなく、遺族が同館に寄贈した直筆原稿や書簡、初版本など計1748点の遺品の中にノートが入っていた。企画展ではこの一部を公開。戦中に警防団の一員だった村上の制服姿の集合写真や、同時期に田端在住だった挿絵画家の岩田専太郎が制作した挿絵をあしらったびょうぶなども展示。
中経出版と新人物往来社は10月10日、新人物往来社の出版部門の営業権を譲渡することで基本合意。新たに中経出版が100%出資の新会社「新人物往来社」を設立し、12月1日から同社の出版事業を継承する。
新人物往来社の社員が出版活動を担っていた姉妹会社・荒地出版社についても、引き継ぐ方向で話し合っている。新会社では、新人物往来社の菅春貴社長を除き、役員・社員は原則として雇用を継続。
中経出版は「ビジネス書、語学書、学習参考書、一般書、文庫に、人気の高い歴史分野を加え、さらに中高年市場で支持をえていきたい」と説明。来春には、歴史小説を中心とした「新人物往来文庫」シリーズを計画、“歴史市場”の強化をする。また、今年に中断していた「歴史文学大賞」を、来年に復活する。新人物往来社=1955年創業・資本金1億0300万円・年商8億円。
京阪神エルマガジン社の「Lmagazine(エルマガジン)」は、12月発売の2月号を最終号とすることを発表した。1977年創刊、関西の地域密着型情報誌として「エルマガ」の愛称で定着していた。「発行部数は安定していた。広告収入の不振が決断の理由」としている。9月に女性誌「Richer(リシェ)」を創刊、東京地区でもムックを販売するなど、新たな展開をする。
日本文学振興会は15日、直木賞の選考委員に作家の宮部みゆきさん(47)が新たに加わると発表した。退任する人はなく、来年1月に予定されている第140回から選考委員
(講談社『BOOK倶楽部メール』 2008年10月15日号より)
・好き…26% ・どちらかといえば好き…18%・どちらともいえない…40% ・どちらかといえば嫌い…14% ・嫌い…3%
【Q2】海外の作家で最も好きな作家は? (BEST5)
1位)アガサ・クリスティ。2位)コナン・ドイル。3位)J.K.ローリング。4位)ミヒャエル・エンデ。5位)ダレン・シャン
【Q3】翻訳小説で最も好きな作品は? (BEST5)
1位)ハリー・ポッターシリーズ。2位)ダレン・シャンシリーズ。3位)シャーロック・ホームズシリーズ。4位)はてしない物語。5位)モモ、赤毛のアンシリーズ
(その他の書き込み)★アレックスシアラーの「チョコレート・アンダーグラウンド」= 登場人物の心理描写もいいし、なによりチョコレートが禁止の世界というアイ ディアを最大限に生かしているところがすごいと思う。小学生のときドキド (北海道 O様 15歳以下)
★アクセル・ハッケの「ちいさなちいさな王様」=とても薄い、挿絵のある絵本みたいな本なのに、突拍子もなくシュールなので読み始めは少し戸惑ってしまったものの、妙に説得力があり哲学的で、色々と考えさせられ (神奈川県 K様 15歳以下)。★「ダレン・シャン」が大好きです!=小学生の頃読んで、最終巻で分かる初巻からの仕掛けにテンションが上がり、友達と興奮したことを覚えていますw (秋田県 S様 15歳以下)。★「青空のむこう」アレックスシアラーさん=とにかく感動でした。家族や友達とあまりうまくいっていない時に読んですごくためになりました。(千葉県 N様 15歳以下)。★「マチルダは小さな大天才」が好きです。=幼少期風邪をひいたとき、母に買ってもらった思い出の本です。(愛知県 H様 10代)。★「魔術師」ジェフリー・ディーヴァー。=このシリーズを毎年楽しみに待っています。シリーズ中あえて作品を上げると したらこれです。読み進める手を止められないほどの傑作でした。あの厚さの本でも通勤途中に読み進め (北海道 K様 20代)。★『はてしない物語』=なんというか、読むたびに感想が違う本です。ちょっと落ち込んだときに手にとって、叱られたり励まされたりしてきました。これからも絶対に手放さない本だと思います。(山形県 M様 20代)。★「どろぼうの神さま」=20代半ばに読んだのですが、こんなにも面白い児童書があるのか! と感動しました。(岐阜県 Y様 30代)。★「スワンの怒り」= ジョハンセンにはまった最初の作品。友人に貸すと戻って来ないので、結局3回ほど買いなおしました。(神奈川県 F様 40代)
★ディーン・クーンツ「ウォッチャーズ」=ホラーは大嫌いなのですが、表紙と妹に薦められて、嬉しい衝撃を受けました。 ホラーでもクーンツならOK! (埼玉県 S様 40代)。★マーティンの「氷と炎の歌」シリーズ。=世界観がしっかりしてて、読みごたえが有ります。(埼玉県 A様 40代)。★『黄金の羅針盤』『神秘の短剣』『琥珀の望遠鏡』=5年ほど前に、このライラシリーズを読みました。ハリー・ポッターよりも、絶対!断然!おもしろい!!!(神奈川県 I様 50代)。★「神なるオオカミ」=最近読んだ中でダントツに良かった。モンゴルの草原の中に食物連鎖というか、共存共栄の全てが入っていた。生きるとはこういうことなのだと教えられた。(東京都 O様 年代不明)
【Q4】翻訳出版してほしい日本の作品は?=作品別)「十二国記」「化物語」「バッテリー」「十角館の殺人」。 作家別)西尾維新氏、辻村深月氏、司馬遼太郎氏、森博嗣氏
【Q5】「○○の秋」と言えば?=・読書…55% ・食欲…29% ・芸術…8% ・スポーツ…5% 「行楽」「味覚」などのほか「覚悟」も。就活や受験勉強でしょうか…?!
(08年10月10日 毎日新聞 朝刊)
TBSの人気時代劇「水戸黄門」第三十九部が十三日にスタートする。一九六九年夏に始まった黄門様の世直しの旅も四十年目に突入。型にはまった「マンネリ」といわれながらも、長寿番組として希有(けう)な存在であることは確か。“長続きするワケ”をあらためて考えてみた。 (山岸利行)
中尾幸男チーフプロデューサー(CP)は「悪人を懲らしめ、人間愛を貫く。これが一貫して守ってきたテーマ。出演者や作り手は変わってきたが、基本的な部分は変わらない」と、番組の底に流れる普遍的なテーマを長寿の理由に挙げる。
石坂浩二が第四代黄門になった際、従来の好々爺(や)のイメージを一新し、斬新で若々しい黄門を演じた。ひげをなくし、印籠(いんろう)もさりげなく出すなどの工夫を加えたが、結果的に視聴者の反応はいまひとつだった。
「あれで、変えてはいけないものがあることが分かった」と中尾CP。番組は作り手だけで作っているのではなく、視聴者の「ここがいいから好き」という反応も長い歴史を支えている、とみる。さらに「劇的な変化はなくても、親子の機微を強調するなど現代の問題もそしゃくして取り込んでいる。そういう部分も受け入れられているのかも」と話す。
長続きの理由を、出演者はどうみているのか。里見浩太朗(光圀)は「先輩出演者の伝統にあるのでは」としながら、「人間愛や情を受け止めていただいていると思う」。原田龍二(助さん)は「子どもが見ても、いい悪いがきっちりわかるのが魅力では」、内藤剛志(風車の弥七)は「ピンチの時はご老公がやってきて必ず弱い者を助けてくれる。この希望のメッセージが魅力」と、それぞれ語る。
「すべての世代が共通で語ることのできる貴重な番組で、『水戸黄門』を愛し続けた国民性は素晴らしい。文化遺産に近い」と話すのは、時代劇評論家のペリー荻野さん。「友情、親子愛などは、どの世代が見ても共感できる」と分析する。年をとっても慕われ、旅を続け、いざという時にピシャリと言う黄門様。「これは日本人が好きなところを網羅している」
「家族そろって楽しめるドラマを」という、スポンサーの姿勢が一貫していることも大きいという。新シリーズから、スポンサーの社名変更に伴い、これまでの「ナショナル劇場」から「パナソニックドラマシアター」となる。
アメリカのサブプライムローンから始まった信用不安は、世界恐慌への恐怖を撒き散らした。
マルクスの経済理論では、資本主義の資本が世界経済システムの矛盾を累積させるとし、昔の国際関係が国際連合などによって協調ができるという理想主義批判してきた。資本の本質を昔から指摘してきたが、一般の経済雑誌にその理論を基礎にしたものが載ることは少ない。
銀行が国営化されるということは、資本主義がその矛盾を解決するために社会主義化したということである。
資本主義社会がその矛盾を埋めようとすると、その活動を社会的にコントロールする社会主義的な修正をしなければならなくなる。
べつに革命など起きなくても社会主義化するのである。
自由主義経済というのは、私が電車に乗ろうとしたら、一駅130円に10円足りない場合に、駅員に120円に負けてくれないか? と交渉する余地があるということである。
そうした話合いの余地や交渉の余地がないのは、資本主義がすでに自由経済でなくなっていることを示している。個人の要求を満たしていると手間がかかり、電車が便利でなくなる。社会の多くの人の都合を優先するシステムにせざるを得ない。社会主義化してきているということである。中国は経済システムから見ると、社会化した資本主義に遅れて到達した国である。
ただし、経済システムと国家における政治権力闘争とは関係が深いが別物である。政治闘争はどこまでも政治闘争である。
「300文字小説」は、本文を300文字(句読点など記号を含む)以内に制限して仕上げる超短編小説。文字制限を除けば、内容は自由。あなただけの着想を300文字に込めた傑作をお待ちしています。
本文300字以内(句読点、記号など含む)の読み切り作品に限ります。改行によって生じる空白は文字数に数えません。
掲載に際し、手を加える場合があります。望まない場合は、作品末尾に「改作不可」と書いてください。
入選作は、サンデー版紙面とホームページ、携帯サイトに掲載します。掲載作品に図書カード(3000円相当)を贈呈します。
300文字小説賞
年2回、監修者の川又千秋氏を中心に審査会を開き、半年間の掲載作の中から最優秀作1点(賞金5万円)、優秀作など数点(各1万円)を選び、表彰します。
郵送での投稿
住所、氏名、職業、電話番号を書き、〒100-8505 中日新聞東京本社(東京新聞)サンデー版「300文字小説」係へ
宝島社は、 累計145万部発行の人気生活実用書シリーズ「おばあちゃんの知恵袋」を核に、本と関連商品のコラボレーションフェアを展開。第1弾テーマは「収納用品」。同シリーズで紹介する収納ノウハウにスポットを当て、対象商品と併せて販売する。フェアは10月10日、東岸和田サティ(大阪)と広島サティ(広島)でスタートした後、三田ウッディタウンサティ(兵庫)、防府サティ(山口)、鴻池サティ(大阪)でも実施。テーマも「美容」「掃除」など拡大する予定。
《対象作品》「山帰来」菅礼子(「北門文学」10号記念号)、「『まぼろしの邪馬台国』映画化こぼればなし」宮崎和子(第七期「九州文学」三号)、座談会「日本の戦後文学再検討」(「中部ペン」15号)、詩「落下水」文月悠光(個人誌「月光」創刊号)、「涅槃月」衣斐弘行(「火涼」59号)、「吉村昭研究」三号、「名古屋市芸術賞記念号に寄せる」棚橋鏡代(「北斗」九月号)、「河林満さんのこと」高橋光子(「群青」73号)、「初秋吟」松雪彩(「木木」21号)。(「文芸同人誌案内」よこいさんまとめ)
作家の佐木隆三氏が、テレビのインタビューで「三浦氏のことをある精神科医が演技性人格障害だといっていたが、言いえて妙だ」というコメントをしていた。
「ロス疑惑報道の95%は嘘だ」三浦和義氏インタビュー集
この佐藤学記者のインタビュー記事にはーー、
三浦氏は、幼少時代には、撮影所に自由に出入りしていたと語る。(第6回冒頭)
「疑惑の銃弾」裁判については、お金も十分にあり、億万長者であることをインタビューで語っている。
また、お金に関しての細かい話をよく記憶している。記事の6回のうち、毎回お金の話がでているのに注目。
三浦氏の自死は、ニュースでは事実だが、これが同人誌の小説の物語であったら、あまりにも唐突すぎるとか、リアリティにかけるとか批判され、信用されないであろう。
事実と真実らしさ、もっともらしさとの違いは、ここにある。俳優の演技も、もっともらしさ、真実らしさをもとめられるのであって、事実らしさを示すものではない。
同人誌の合評会などで、リアリティがないといわれても批判ではないのである。気にしないことだ。
第15回「電撃大賞」の小説部門は川原礫氏の『アクセル・ワールド』、イラスト部門はゲま氏の「シャープエッジ」が各部門の大賞に輝いた。これを含め金賞、銀賞、選考委員奨励賞などの贈呈式は11月6日、東京・港区の明治記念館で行われる。
昨年、本誌6月号で募集を開始した「第3回 ダ・ヴィンチ文学賞」に、総計553作品もの応募が寄せられました。
厳正なる審査のもと、1次選考を経て2次選考通過11作品が選ばれ、その中から最終候補となった6作品が読者審査員100名による審査を経て、結果、受賞作は以下3作品に決定いたしました。 『地図男』真藤順丈、 『朝顔の朝』遠野りりこ 、『吉野北高校図書委員会』 山本 渚。 最終候補作品(※受賞作3作品を除きます)『そしてミッションが始まる』英 雄飛、『天国の脂身』佐藤花那子、『マリアンヌ・マロニコと巻機山一葉(まきはたやまかずは)』浅野 歩。2次選考通過作品(※最終候補6作品を除きます)『KLON』野口雄也、『疾風の少女』小玉倫菜、『市民球場哀歌』河合 慎、『TSUBAKI』望月 圭、『夏の球電』結城充考、『眼醒めの花と症候群』磯貝依。
★募集内容= ジャンルは問いません。読者の心をわかせ、楽しませることができるものならば、明確なカテゴライズのできないものでも構いません。あなたの心の中にある思いを、読む者の心に届く小説としてまとめてください。とはいえ日本語で書かれた未発表のオリジナル小説に限ります。他の文学賞に投稿されたもの、及び二重投稿はご遠慮ください。
応募資格= 不問。原稿の形式 応募はすべて電子メールにファイル添付のうえ送信願います。ファイル形式は“テキスト”“ワード”に限定させていただきます。手書きの原稿用紙、ワープロの打ち出し原稿などはお受けできません。あらかじめご了承ください。原稿の分量 400字詰原稿用紙換算100~200枚
作品情報添付のお願い 上記原稿以外に、次の内容を明記した作品情報を冒頭にお付けください。
・タイトル ・著者名(本名でなくても可) ・500~1000字程度のあらすじ
・住所 ・本名 ・年齢 ・略歴 ・電話番号 ・メールアドレス。
応募先/問い合わせ 電子メールアドレスbungaku@mediafactory.co.jp※原稿は、電子メールにファイル添付して送信ください。ファイル形式は“テキスト”か“ワード”でお願いいたします。
概要 =賞 大賞1編:賞金100万円及び、受賞作(を含んだ作品集)の書籍刊行。※優秀賞・読者賞・特別賞なども別途検討いたします。
★~募集締切~★= 2009年1月10日(電子メールにて当日24:00必着) 。選考方法= ダ・ヴィンチ編集部の一次選考、二次選考を経て候補作を決定し、2009年4月6日発売の『ダ・ヴィンチ』5月号に、候補作の作品名及び著者名を発表します。次に、事前に読者より公募した「読者100名審査員」による選考を行います。その結果を踏まえ、ダ・ヴィンチ編集部と「ダ・ヴィンチ文学賞映像化検討委員会」で最終選考を行い、大賞を選定いたします。 発表 2009年4月にWEBダ・ヴィンチ(http://web-davinci.jp/)上で発表、詳細は5月(『ダ・ヴィンチ』6月号)にて発表いたします。
主催 株式会社メディアファクトリー『ダ・ヴィンチ』編集部
※注意事項受賞作(大賞及びその他の賞を含む)の著作権は著者に帰属しますが、出版権、雑誌・WEBなどへの掲載権、映像化権、その他二次的利用権などの諸権利は主催者である株式会社メディアファクトリーに帰属します。賞金は権利譲渡の対価といたしますが、株式会社メディアファクトリーからの書籍刊行時には、別途所定の印税をお支払いいたします。選考途中でのお問い合わせには応じられませんのでご了承ください。
本賞応募に際してご提供いただきました個人情報は、選考及び本賞に関する結果通知などに限って使用いたします。それ以外の使用はいたしません。
第56回菊池寛賞(日本文学振興会主催)が決まった。「櫂(かい)」「一絃の琴」「錦」など日本の伝統文化や歴史の中の女性を描いてきた作家、宮尾登美子さんら5個人・団体。その他の受賞は次のひとたち。(敬称略)▽安野光雅(「繪本平家物語」「繪本三国志」刊行など多方面の業績)▽北九州市立松本清張記念館(水準の高い研究誌や多彩な企画展)▽かこさとし(児童文学者としての活動と「伝承遊び考」の完成)▽羽生善治(永世名人など将棋界の数々のタイトルの獲得)。副賞100万円。
(08年10月9日 読売新聞) 【ストックホルム=本間圭一】スウェーデン・アカデミーは9日、2008年のノーベル文学賞をフランスを代表する作家、ジャンマリ・ギュスタブ・ル・クレジオ氏(68)に与えると発表した。
授賞理由は「詩的な冒険と官能的な恍惚(こうこつ)を表現し、現代文明の表裏に潜む人間性を探求した」。
ル・クレジオ氏は、英国人医師の父親とフランス人の母親の間に仏南部ニースで生まれた。8歳の時、一家でナイジェリアに移住した体験がその後の作家活動に影響を与える。帰国後、英国のブリストル大留学を経て、エクサンプロバンス大で修士号を取得。英仏2言語を自由に操る。
言語が持つ力を探究した23歳で執筆した第1作「調書」でルノード賞を受賞。その後、「発熱」(1965年)や「大洪水」(66年)などを発表、西欧社会の大都市に潜む混乱や恐怖を描くとともに、「戦争」(70年)などの作品で自然や環境への興味を示した。また、アルジェリア人労働者を主人公にした「砂漠」(80年)で、欧州社会が持つ野蛮性を痛烈に告発、代表作の一つとなった。
最近では、70~74年にメキシコや中米で過ごした体験などを基に、「メキシコの夢」(88年)などを執筆、西欧社会とは対照的な神話の世界を追い続けている。2006年に39年ぶりに来日、奄美大島を旅行したほか、友人で作家の津島佑子さんの案内で北海道を訪れ、アイヌの人々と話し合った。
賞金は1000万スウェーデン・クローナ(約1億4400万円)で、授賞式は12月10日にストックホルムで開かれる。
第36回泉鏡花文学賞(金沢市主催)の最終選考会が9日、東京・赤坂で開かれ、受賞作に南木佳士(なぎけいし)氏の「草すべり その他の短篇」(文芸春秋)と、横尾忠則氏の「ぶるうらんど」(同)の2作品が選ばれた。
石川県白山市が主催する「第15回島清(しませ)恋愛文学賞」の受賞作が8日、発表され、作家の阿川佐和子さん(54)の小説「婚約のあとで」(新潮社)が選ばれた。
【「欅道」山本進】
語り手は、自分の恋人を兄に奪われ、嫂となった女。やがて兄は、病死。語り手は嫂を我がものとする。平べったく言えば簡単であるが、男の鬱屈した暗いエロスと情念を、作者はかなり高度な文章力で、句点を多用し、読点を省略した独自の文体で陰影をつけ、強く浮き立たせることに成功している。しかも、語り手が認知症か、妄想症をもつようなニュアンスを取り込み、朦朧とした物語に作り上げている。創作意欲の横溢した挑戦的な作風に新鮮さがある。
【「グランマにあらず」斉木ユカル】】
高齢出産した女性の子育てのなかの憂鬱を描く。公園デビューとかいうのか、やっと授かった子供を公園に遊びに連れて行っても、まわりの母親たちが若いので、コンプレックスを感じてしまい、周囲をコンプレックスでゆがめてみてしまう話。丁寧な筆致で、一部に当事者のみが抱く感情にリアリティがあるものの、小説として読むと、長すぎて単調に感じた。後半では智という子どもに障害でもでそうな陰鬱さが全体のトーンになっている。産後ウツを長く引きずってしまった母親の話に思える。ドキュメンタリー的な色彩強く、創作的要素がやや負けている感じがした。
《対象作品》「教室はやり唄」亜木康子、「砂漠の雨」冬樹美緒(以上「湧水」40号/東京都)、「山葡萄のねじれ」篠原しのぶ(「修羅」57号/桶川市)、「アトランティックウエザー」塚越淑行、「彼岸桜の家」島永嘉子(以上「まくた」261号/横浜市)、「卯の花腐し」鈴木比嵯子、「秋の気配」田瀬明子(以上「ガランス」16号/福岡市)、「不惑」高橋綏子、「皇紀二六〇四年の中学生日記」木村和彦(以上「海峡派」113号/北九州市)、「大気圏外への孤独」佐伯敏光(「VIKING」691号/茨木市)、「妖精の庭」高田恵子(「だりん」57号/船橋市)、「残された本」酒井敏子、「クローズィング・ツゥナイト」大重道子(以上「私人」63号/東京都)、「かたすみの向日葵」田中信子(「樹林」523号/大阪市)、「地裏より―藪睨み能舞台―(五)」西澤建義、「平林彪吾とその仲間たち(十)―私抄『文学・昭和十年前後』―」松元眞(以上「文芸復興」19号/船橋市)、「成人男子のための『赤毛のアン』入門」山川浩介(「砂」108号/東京都)、「母の頼みごと」楠本耀子(「葉風」7号/東京都)、「こよなく愛すインターナショナル」竹原素子(「シリウス」18号/水戸市)。
ベスト5=「教室はやり唄」亜木康子、「山葡萄のねじれ」篠原しのぶ、「不惑」高橋綏子、「母の頼みごと」楠本耀子、「卯の花腐し」鈴木比嵯子。(「文芸同人誌案内」よこいさんまとめ)
(文化部 村田雅幸)
「はみ出し刑事」 男の誇り
人生、できれば裏切られずに過ごしたいものだ。が、小説は別。大沢在昌「狩人」シリーズ6年ぶりの第3弾『黒の狩人』(幻冬舎)は、いい意味で読者を裏切る。
主人公は、前2作で脇役だった新宿署の暴力団担当刑事・佐江。組織におもねらぬ「はみ出し者」ゆえ、畑違いのやっかいな事件にかり出されてしまう。
中国人ばかりを狙った惨殺事件が連続した。被害者に共通するのは、謎の刺青(いれずみ)があること。事件の背後には、中国国家安全部の影が見え隠れし、警視庁公安部も水面下で動くが、表だった捜査は佐江と、突如コンビを組まされた正体不明の中国人・毛とに任される。
佐江が何とも魅力的だ。すねた男かと思えばさにあらず。〈カス札にはカス札なりの意地がある〉と吐く、タフガイなのだ。物語自体も、心理戦あり銃撃戦ありで一瞬たりとも目を離せない。加えて読み手は、予想を何度もひっくり返される。毛の視点から現代日本を客観的に浮かび上がらせたのも新鮮で、読者を存分に楽しませつつ、最後には、自分も誇り高く生きたい、とすら思わせるだろう。 大沢在昌『黒の狩人』(上、下)痛快度★★★★☆ 疾走感★★★★★ 満足度★★★★☆
恩田陸『きのうの世界』(講談社)は、軽々とジャンルを越境するこの作家にふさわしく、ミステリーともファンタジーとも、あるいはホラーともつかぬ独特の雰囲気を漂わせる。
〈そこにあることに意味がある〉と伝えられる塔が3本立つ地方の街で、1年前に東京で失踪(しっそう)した男の死体が発見された。男はなぜ、ここで死んだのか。その謎と街の秘密とを、寄せては返す波のように少しずつ明らかにしていく恩田節とも言うべき「語り」が、今作はとりわけすばらしい。〈あなたは……〉という誰に向けたか分からぬ呼びかけで始まり、それに続く〈捨てられた地図〉〈焚(た)き火の神様〉〈同じ顔をした男〉といった意味深なキーワード。登場人物たちの目に映る物も少しずつズレており、核心に近づいたかと思えば、また遠ざかる。慣れぬ読者は戸惑うかもしれないが、結末に真っすぐ向かわないからこそ生まれる奥深い世界もあるのだ。 恩田陸『きのうの世界』幽玄度★★★★☆ 意外性★★★★☆ 満足度★★★★
湊かなえのデビュー作『告白』(双葉社)は、教え子に娘を殺された中学教師の復讐(ふくしゅう)劇を、教師や犯人、級友らのモノローグを積み重ねて描く力作。ある独白を読めば、それまで嫌悪していた犯人に同情し、しかし別の独白を読めば、陰鬱(いんうつ)とした気分に逆戻りする。
人の心とは難しい。単純に黒白とは分けられず、その間のグレーにしても、数えきれぬほどの段階がある。が、著者は新人離れした筆力でこの難敵に立ち向かい、成果を残した。いくら読み進めても救いがないのに、どうしても本を手放せないなんて……。今後の期待も大きい作家の原点を、みすみす見逃す手はない。湊かなえ『告白』衝撃度★★★★ ダークさ★★★★☆ 満足度★★★★
最後は少し毛色の変わった作品を。ドナ・ジョー・ナポリ『わたしの美しい娘』(金原瑞人、桑原洋子訳、ポプラ社)。著名な童話を下敷きに、全く違った切り口から新たな作品に仕立ててきたナポリの新作は、グリム童話「ラプンツェル(髪長姫)」の変奏曲だ。娘を思う母の狂おしいほどの愛が、逆に娘を傷つける。果たして母子の運命は? いつまでも余韻が残る結末が待っているとだけ記しておく。ドナ・ジョー・ナポリ『わたしの美しい娘』切なさ★★★★☆ 独自性★★★☆ 満足度★★★☆
「第5回親鸞賞」が7日、作家立松和平さん(60)の小説「道元禅師」(東京書籍)に決まった。 本願寺維持財団(京都市山科区)の主催で、賞金は200万円。授賞式は12月9日、京都・東山浄苑で行われる。
柳楽優弥が原案の小説「止まない雨」(SDP出版)が、11月5日に発売されることがわかった。
物語は宅配会社のドライバー松本桂二とカフェのウェイトレス立花理美の愛の物語を軸に描かれる。アパートで同棲生活を送る二人だが、職場のトラブルで解雇された桂二は酒におぼれ、ドラッグに手を染め、闇の世界で暗躍してしまう。しかし、彼を信じて待ち続ける理美にも病魔が襲いかかり、桂二は理美との愛を取り戻すために彼女のもとへ駆け付けるという純愛物語だ。
本小説の原作者となる柳楽は、本作についての思いを「僕も18歳になって、いろいろな経験をしてきました。人に言えることや言えないこと、いろいろあります。今回の小説のストーリーは、今まで見たりしたことなどが多いです。それと想像。桂二という名前にも思い入れがあります。1番好きだけど、1番嫌いな名前でもあります。複雑な思い入れなんです。なぜ、桂二という名前にこだわったかと言うと、複雑な思い入れのある名前を自分が演じたいと思ったから。僕が桂二という名前の役を演じて、誰かに何か感じてもらいたかったから。もし、ほかの俳優が桂二という名前を演じていたら、嫉妬します」と語り、主人公の桂二に自分の姿を投影した渾身の作であることを語った。
柳楽といえば、記憶に新しいのが急性薬物中毒で病院へ搬送されたことで今後の動向が注目されていた。一時は自殺とうわさされたが、家族と言い争いをしている最中に、処方されている安定剤を衝動的に飲んでしまい、自ら救急車を呼んだとオフィシャルサイトで公表し復帰が待たれるところだった。
一部報道では、柳楽の薬の常用を疑うものもあったが、今回の小説では、あえてドラッグにおぼれる主人公を描くという挑戦的な創作物を発表した、彼の勇気と事務所の決断を評価したい。
役者としても繊細でありながらもかつ大胆。自分の現在の人格や生き方を役に投影していくタイプだ。本作の創作にあたって「複雑な想い入れのある名前を自分が演じたいと思ったから」と動機を語る柳楽が桂二を演じる姿を見る日はそう遠くはないかもしれない。
「止まない雨」は原案・作:柳楽優弥、執筆協力:井上凛、11月5日発売 1200円+税(予価)SDP出版刊
雨であったが、文学フリマの会場の風景を撮ってみた。つくばエキスプレスの駅から上がって右側の通りに、工事現場があります。ワシントンホテルが解体され、神田川向こう岸の神社の屋根がみえます。解体工事の音もなく。静々と毎日ビルが消えてゆくのだった。またビルが建ったらこの光景は見られない。
文学フリ会場は、この工事現場を左に行くと、東京都中小企業公社の細くて青い看板が2階にあります。というより、「浜町亭」(100席なんとやら)という赤白の看板の見える、居酒屋と同じ階です。たしか、トイレが共通場所で、5月には昼食を営業していました。今年はどうでしょう。

出店参加者の常連に、名物男「幻魚水想記」を5円で販売する野田さんが居ます(文芸同志会員、PJニュース記事参照)。あの昔のアイドル作家・中沢けい法政大学教授が、思わず買ってしまったという読み物。
(紹介者・江素瑛)
人の目にはゴミであるかもしれないが、自然の摂生として肥料である蝉の死骸は、後祭りの「埋葬に来る蝉はいない」。野垂れ死にする人間の場合は、どうなるのか?鬼籍に入るには、早く生者の世界から身を引き、灰になれ、墓の一隅に静かに入ろうと。「人の死は片づけられるもの」「そのまま夜を迎えるなどあってはならないこと」。それはそうだ、と言いたくなるが、重い話です。
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その1 「埋葬に来る蝉はいない」 関 中子
埋葬に来る蝉はいない/ 彼が行きたがったところをお前は知っているか/ 生前の彼を知るも
のがどこかにいてもーー 埋葬に来る蝉はいない
夕暮れは物の姿をおぼろにするが/ 自分の身の安全をはかれるとしても/ 埋葬に来る蝉はいない
待っても 待っても 意味はない/ 蝉の死骸を見る/ 埋葬に来る蝉はいない/ 「これが現実だ」/ 埋葬に来る蝉はいない
なのに 夕暮まで/ そうしてもう少し夕暮れが深まるまでと時を延ばし/ 蝉の死を見つづける/やがて蝉の姿は闇に包まれるだろう/ わたしはそこに決断を曖昧にする口実を探し求めるのか
あわれ そうしたいのか
その2 「あってはならぬこと」 関 中子
蝉のように腹を見せて人が死んでいる/ その死体を見捨てて人が彼の坂道をのぼるなどあってはならぬこと/おう/ 人が蝉のように路上に転がって死んでいる/ そのまま夜を迎えるなどあってはならぬこと
都会での日常的な死は人目に長く晒されない/ 人の死は片づけられるもの
彼が死者になるために彼を速やかに時から離籍せよ/ 多くの人の眼が彼の肉体に注がれ続けるなどあってはならないこと
きょう わたしは見知らぬ人の葬儀にであった
それが都会での最初のできごと
それはまた珍しいこと/ 都会の多くの死のひとつに遇うこと
人よ/ もし いつまでも憧れとして残りたいのなら/ その身を早くかくしたまえ
そして 永遠を飾りにできるように物語に身をひそめよ
2008年秋「岩礁」136号(静岡市三島)「蝉の話」より抜粋
今週の本棚:沼野充義・評 (毎日新聞 08年8月17日 東京朝刊)
◇現代文学の頼もしい案内役
文芸時評はもう要らないのではないか、という懐疑的な意見をよく耳にするようになった。しかし、文芸時評はまだ着実に続いているだけではなく、それが持続し、積もり積もると時代の記録としてかけがえのないものになる。かつての文芸時評の巨人、平野謙や江藤淳の例は引き合いに出すにはもはや遠すぎるとしても、最近でも、『産経新聞』に掲載された時評をまとめた荒川洋治の『文芸時評という感想』(四月社)、『東京新聞』などの新聞三社連合で配信された時評をまとめた菅野昭正の『変容する文学のなかで』(全三冊、集英社)といった優れた仕事がある。そこに新たに付け加わったもう一つの雄弁な声が、本書にほかならない。
これは川村湊氏が『毎日新聞』に掲載してきた文芸時評を集大成したもので、十五年間休むこと