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2008年9月19日 (金)

小出版社の挑戦(1)トランスビュー社長・中嶋廣さん

trans(通す)view(見る)」。一見、英語風の社名は「見えないところまで見通す」という意味を込めた造語だ。その社名と同じように、独自の出版活動を展開、出版界に新たな潮流を起こしている。

 筑摩書房で編集者としてのキャリアをスタートし、9年後に法蔵館に入社。雑誌「季刊仏教」の担当として、森岡正博、養老孟司、池田晶子ら、仏教関係者以外の人々を登場させ、交流を深めた。しかし、老舗の出版社で働く中で、仕事に限界を感じるようになった。
 14年間勤めた同社を辞め、仲間2人と会社を作ったのは47歳の春。「本作りに必要ないものはゼロでいい」。東京・中央区のビルの狭い一室で、小さな会社は産声を上げた。
 特徴は、その流通システムだ。通常の書籍は、出版社から大手の取次会社を通じて書店に出回る。出版社が配本や営業のコストを削減するためだ。しかし、共同代表の工藤秀之さんが提案したのは、取次を通さずに、直接書店と取引する方法だった。注文を受けることで無駄な返品のリスクは減り、取次を通さないことで書店の利益も大きい。出版社と書店の信用によって成り立つこの方法に当初は驚いたが、導入に迷いはなかった。「従来のやり方では、出版社として成り立たないことはわかっていた」
 新方式の効果は、すぐに表れた。創業当時から返品は少なく、出版界全体の返品率が4割近い現在でも、返品率は約7%にとどまる。そして、この方式をとったことで、取次会社への納期を気にせずに、納得いくまで本作りを追求できるようになった。その中から生まれた池田晶子著「14歳からの哲学」は、35万部のベストセラーになった。
 10月には、小島毅著「父が子に語る日本史」の刊行を予定している。教科書の歴史の背後にある日本人の歴史観を、平易な言葉で問い直した意欲作だ。「100万冊売れたベストセラーであっても、買う人には1冊の本。読者にとって価値のある本を出していきたい」(川村律文)(08年9月16日 読売新聞)

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