詩の紹介 「 集団の夕暮れ 」 作者 栗和 実
( 紹介者 江素瑛 )
個人の個性を殺すことは集団の性格である。郷に入って郷に従う人間の性格もまた、集団に逆らうことない。早かれ遅かれ、個性は同化され、集団の特殊な慣わしに見習わせる。その性格をよく利用して、人々を集団化する政治団体など、詐欺師の暗躍する余地が生まれる。
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【集団の夕暮れ】 栗和 実
狸でも 猫でもいい/ 何かし出かそうとする/ すると/ よこしまな猿としよう/ 姿を現す 集団化する ボスが発生する
はじめは 目的も 目標もある/ しかしまもなくそれらはつぶれて/ 美しい入日のように眼をくらまし/ 集団は変化してゆく
実行は単なるお祭りになり/ 本義を取り間違えて見せつける/ 何かしようとした事の/ 本来は無雑作に旋回してしまう/ この田舎に住む者達の特異性にすがり/ 風の動くままになってしもう
狸たち 猫たち 猿たち/ 日がたち 時がたち/ いつの間にか 影もそうなる
田舎の 人間達の/ 女たち のあいそ笑いのように/ すっかり 皆だまされている
と気づいてののどのかわき/ りっぱな口内炎になっている/ 個性も 野生も/ 集団化すると衆愚に埋没
煙のように エゴイズムの余りは/ 本物になり盛大に成長し/ 天の方にのぼるばかりだ
岩礁 (三島市)136号より(08 9 1)
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