第8回本格ミステリ大賞特別賞を受賞した島崎 博さん(75),台湾から戻って
1975年~79年に刊行された探偵小説専門誌「幻影城」は、今や伝説化している。郷里の台湾に帰っていたその名編集長が29年ぶりに来日。功績をたたえる賞を贈られた。「まさに青天の霹靂(へきれき)。長生きして良かった」
忘れ去られていた戦前の推理小説を再評価し、直木賞作家の泡坂妻夫、連城三紀彦や人気作家の田中芳樹、栗本薫の各氏を育てた苦労がやっと報われた。
55年に日本へ留学し、約3万冊の古書を集め推理小説の魅力に取り付かれた。幻影城に携わったのは、「刺激的で面白い日本の推理小説を体系化したい夢があった」から。しかし同誌を守る金策のため台湾に戻った直後、政治的混乱の影響で再来日できなくなり、雑誌の命脈も絶たれた。「その後、自由が戻っても、すべて嫌になっていた」。それでも台湾で日本ミステリーの紹介に努めてきた。
長く消息不明だったが、4年前、ファンが所在を突き止め、請われて日本の土を踏んだ。これを機に、再び「幻影城」の編集長を頼まれたら? 「資料が散逸して無理だろうけれど、はっきりいってやりたい」(文化部 佐藤憲一)(08年9月25日 読売新聞)
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