同人誌作品紹介「孤帆」第13号(小金井市)
【「不在のかたち」北村順子】
より子という女性から見た図書館勤めの職場風景なので、地方公務員なのであろう。エルンスト・バルラハの展示会の話から、職場の人、まだあったことのない兄など、あれこれと書いてあるが、エピソードそのものが、何かの粗筋的。どこに問題意識があるのか、何にこだわりがあるのかエピソードの中の脈絡を読みとることができなかった。独り言を記録したようなところがある。書き手には、癒しになることは間違いないが、読者には、なんでも差異なくこだわるというのは、こだわりのないのと同じ読めてしまう。強いていえば、こだわることへの自意識の不在を感じさせることが狙いなのか。
【「あしたへ」淘山竜子】
由子という独身女性の都会での独り暮らしを描く。職場の様子が具体的に描写されているのが、話を分かりやすくしている。離婚した母親の再婚相手の連れ子の義弟との関係と忘れられない恋愛感情を描く。母親への愛憎の微妙な感情も描かれる。いわゆる血縁の家族構成と血縁のない家族を構成させることで、肉親愛と他者愛への落差を意図したもののようだ。
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