「RURIKO」 林 真理子さん
当時は、田舎の小さな町にも映画館があった。夕涼みがてら家族で出かけ、美男美女が演じる華麗なドラマに胸ときめかす。「郷里の山梨で幼いころ私も垣間見た、あの世界の『におい』を出せたら」。銀幕スターが輝いていた昭和30年代。その舞台裏に恋愛小説の名手が迫った。
満州(現中国東北部)で実力者、甘粕正彦から「将来、ぜひ女優に」と見込まれた信子。帰国後、十代半ばで日活の主役募集に合格。浅丘ルリ子の名でトップ女優に育っていく。共演男優や監督と映画そのままの恋愛を重ねながら。
本人らに取材した交友関係をもとに想像を膨らませ、「9割5分は創作」。とはいえ、石原裕次郎やライバルの小林旭、女王・美空ひばりらの栄光と孤独が交錯し、映画全盛期の熱気と人間模様が生々しく伝わるから不思議だ。「超ビッグなスターが全部つながってるのだから面白い。こんなしゃべり方だったのではと書き分けるのが楽しかった」
現在、林真理子版の源氏物語を執筆中。「1000年前も昭和の時代も、メールや携帯が幅をきかせる今にはない男と女の物語があった。テレビ全盛の時代のスターは小粒だし、ルリ子さんのような存在はもう出ないでしょうね」(角川書店、1500円)(佐藤憲一)(08年7月22日読売新聞)
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