「オーマイ」ニュースに幕 「市民が記者」ネット新聞苦戦
市民記者による報道をうたい文句にしてきたインターネット新聞「オーマイニュース」が、8月いっぱいでニュースサイトとしての看板を下ろすことになった。2000年代に入ってネット上に次々と登場した市民メディアだが、ブログとの競合などもあり、ビジネスとして軌道に乗せるには道のりは遠いようだ。
オーマイニュースは、市民から募集した記者がニュースを書いてサイトに掲載するスタイルのメディアで、00年に韓国で創刊。現在は約6万人の記者が登録している。02年の大統領選では盧武鉉(ノムヒョン)政権誕生に影響を与えたとされる。
日本版が始まったのは06年8月。運営会社には、韓国のオーマイニュースが70%、ソフトバンクが30%出資した。登録した市民記者が書いた記事を、マスコミ出身者らによる編集部で編集。記事1本につき300円の報酬を払い、運営会社はサイト上にはりつけられた企業広告などで収入を得る仕組みで、最近ではグルジア紛争に絡みグルジア人にメールでインタビューした記事などが掲載された。
9月からは、運営会社は現行のサイトに代わって新サイト「オー!マイライフ」を開設。市民記者による投稿の仕組みは残すが、中心は、企業とのタイアップも視野に入れた新商品やサービスの体験報告などに移す。
その理由について、平野日出木編集長は「広告収入の伸び悩みを解消するための方針転換」と説明する。閲覧数などは明かしていないが、平野編集長は「自分の意見をニュースと誤解している人も多かった。事実を書くトレーニングの仕組みを作る必要があったが、うまくいかなかった」と話した。
市民記者の数も当初の目標は「06年内に5000人」だったが、現時点で約4650人にとどまる。平野編集長は「ブログの普及で、情報発信したい人がそちらに流れたことも一因かもしれない」としている。
「市民が記者」が旗印の同業者も、試行錯誤が続いている。「JANJAN」を運営する日本インターネット新聞の竹内謙社長は「当初は市民記者のニュースを中心に考えていたが、閲覧数が伸びなかった」として、現在は半分以上の記事をマスコミ出身者らで作る編集部が出している。それでも1か月の閲覧数は約1000万件と、目標の年間約2億件には届かない。
「PJニュース」の小田光康社長も、「広告収入とポータルサイトへの配信による収入は、運営費ですべて出ていってしまう」と、運営の難しさを説明する。
立命館大学の津田正夫教授(メディア論)は、「北海道洞爺湖サミットでは市民メディアが先住民族の声などを積極的に取り上げるなど、既存メディアとは違った視点が評価された」とした上で、「市民メディアは、既存メディアと対立するものでなく、補完しあうもの。市民が発信できる場があることが重要だ」と話している。(08年8月29日 読売新聞)
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