同人誌「かいだん」57号(東京)作品紹介(2)
【「冬日和」田川肇】
講談社のフェイマススクールは当初は、絵画の学校教室としてあったが、その後、小説の分野でも開始し、ほどなく廃止されてしまった。これはその小説教室において、作者の講師であった作家との死をめぐる関係を書いたもの。人物や主催会社は、実名でなく変名を用いて作品化されている。講談社は音羽者になっている。
この教室を受講するときに、それぞれ、学びたい作家を選ぶ。その作家に習作を提出して論評を受けるのである。主人公は、肺癌の手術をしたあとの御木本幸次という作家の教室にいて、肺癌の再発で死の床にある老作家を見舞うところから始まる。そうした題材を扱いなら、作者が自身の文学への姿勢を問い確かめる内容となっている。そうした作家の教室のその後の風景が描かれていて、興味深い。
かくいう自分も、純文学系の伊藤桂一教室に通った。師の生徒に対する責任感は強く「君たちには可能な限り、指導受け持ちをするよ」と、「グループ桂」で、不肖な生徒(鶴樹のみ。他の生徒たちは文学賞を受賞している人が多いので)を指導している。
また、娯楽小説のジャンルでは、山村正夫教室が生前に篠田節子、上田秀人、室井佑月、鈴木輝一郎などを輩出。山村氏亡くなった現在は、森村誠一氏をリーダーにして、入学希望者の絶えない人気教室になっている。
当時、田川氏はフェイマススクールの御木本幸次(これは作中名で、あまり売れない作品を書く純文学作家らしい)とかいう作家の教室に、実際に通っていたのかも知れない。また、作者の田川氏は、編集後記に炭鉱の三井田川鉱業所の跡地について、述べており、そこに田川肇というペンネーム由来があるらしい、とわかった。
同人誌「かいだん」発行所=〒154-0071、世田谷区千歳台2-34-6、山室方。
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