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2008年7月27日 (日)

「警察小説」文庫本で活気!組織内での葛藤に共感

 ミステリーで今一番活気があるのが警察小説。その中でも文庫のラインアップで、書き下ろしや隠れた名作復刊などユニークな動きが目立っている。「文庫で読む警察小説」の魅力とは。(佐藤憲一記者)
 「組織の中にいる一人の人間がいかに原理原則を貫くかを、成長物語として描いてきた。でもこういう男とつきあうのは作者として少し疲れました」と笑うのは、新刊の『久遠(くおん)』(上下、中公文庫)で刑事・鳴沢了シリーズを完結させた堂場瞬一さんだ。
 生まれながらの刑事、鳴沢が新潟県警を振り出しに、警視庁の各署やアメリカを転々と移り、犯罪に立ち向かっていく。当初は単行本で出ていたが、2作目が文庫化された2005年から、「父親や上司と対立しながら信念を貫く主人公の不器用な生き方」(編集部)への共感が広がり、4作目からは年2冊ペースで文庫書き下ろしに。10話11冊で104万部に達した。
 ミステリーでは珍しい文庫書き下ろしの刊行方式を採ったのは、読者を待たせないため。値段も手ごろな文庫で短期間に冊数を増やしたのは、シリーズの登場人物に愛着を持つことが多い警察小説の特色に合っていたようだ。
 『果断 隠蔽(いんぺい)捜査2』(新潮社)で今年、山本周五郎賞、日本推理作家協会賞をダブル受賞した今野敏さんは、以前から警察小説を手がけてきたベテラン。角川春樹事務所のハルキ文庫では、その原点、安積班シリーズを中心に8月から警察小説フェアを実施する。
 シリーズ第1作の『二重標的』(1988年)は、発展前のお台場を舞台に、ベイエリア分署の安積警部補が個性豊かな部下を率いライブハウスの毒殺事件に挑む。同署員のチームワークとともに、強権的な警察の体質に反感を覚える安積の正義感が印象的だ。
 今野さんは、山本賞の記者会見で「バブル時代は一匹オオカミ的な警察官が好まれたが、今の時代は組織の中で個人がどう動くかへの読者の関心が高くなった」と話した。その意味では、組織人としての葛藤(かっとう)を抱える安積は、時代を先駆けていたのかもしれない。同文庫では、現実の不祥事に材をとった佐々木譲さんの道警シリーズも面白い。
 関西のファンにお薦めなのが、創元推理文庫の「黒川博行警察小説コレクション」。現在は犯罪小説に比重を移した作者が、80年代のデビュー当初発表していた『二度のお別れ』『海の稜線(りょうせん)』など謎解きを絡めた警察ものを復刊した。
 大阪府警の刑事コンビが、ぼけとつっこみの絶妙な会話を繰り広げ、担当者も「編集作業をしていると関西弁が移ってしまうほど」という。人間味あふれる大阪の町の描写も鮮やかだ。
 刑事たちと町を歩き、その成長を見守る楽しみにあふれた警察小説。文庫でまとめて読めば、寝不足が続くこと必至だろう。(08年7月23日 読売新聞)

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