文芸作品コンビニで、難解な名作は漫画で…活字回帰狙う
若者が気軽に立ち寄るコンビニで、文芸作品にも手を伸ばしてほしい――。若い世代の活字離れに悩む出版界が、そんな思惑から人気作品をコンビニの店頭に置き始めた。ただし、直木賞作家の作品は表紙を人気漫画家に飾ってもらい、難解な名作は思い切って漫画化。ちょっと手を加えた「コンビニ小説」で、若者の活字回帰を狙っている。
関東地方にある約4000店のセブン―イレブン全店に、大沢在昌さん、宮部みゆきさん、京極夏彦さんの作品が並び始めたのは5月中旬。どれも新作ではないが、表紙は若者に人気の売れっ子漫画家3人が描いており、イメージが一新された。京極さんの「薔薇十字探偵 I」の場合、漫画「DEATH NOTE(デスノート)」の作画担当で、昨年、太宰治の「人間失格」(集英社文庫)の表紙を描いてヒットに導いた小畑健さんのイラストだ。
「ペーパーバックスK」と銘打ったこのシリーズは、セブン―イレブン・ジャパンと作家3人が所属する「大沢オフィス」の共同企画。講談社が4万部出版し、3人のホームページ「大極宮」でも積極的にPRしている。秋以降に全国展開での第2弾も考えているという。
◆名作を漫画化◆今話題の「蟹工船」や、「罪と罰」「破戒」といった重いタイトルの本を並べるコンビニも増えた。名作文学を漫画化したイースト・プレス(東京)の「まんがで読破」シリーズ。昨年7月、コンビニ中心に販売を始め、この1年で17タイトル90万部を売り上げた。「お堅いイメージの名作も、漫画化してコンビニに置けば読んでもらえるのではと思った」と担当の円尾公佑(まるおこうすけ)さん。これまで、雑誌やハウツー本が中心だったが、「コンビニ側からも、『こういうものを置きたかった』と歓迎されたし、読者から『小説も読みたくなった』との声もたくさん寄せられた」と話す。
「サークルKサンクス」と「ファミリーマート」もPHP研究所と組んで先月から、歴史上の人物の評伝「戦国闘将伝」シリーズの販売を始めた。担当者は、「戦国時代を舞台にしたゲームが人気なので、若者にも受けると思う」と期待する。
出版業界とコンビニの“コラボ”が活発化している背景には、出版業界の苦しい台所事情がある。出版科学研究所によると98年には2兆5415億円だった出版物の推定販売金額は昨年は2割減の2兆853億円まで落ち込んでいる。講談社の唐木厚・文庫出版部長は「若い人にはコンビニで気軽に買えることが重要。コンビニを入り口に、いずれは書店にも足を運んでほしい」と狙いを話す。
状況はコンビニ側も同じ。日本フランチャイズチェーン協会によると、99年は9・6%増だったコンビニ売上高の前年比は低落傾向にあり、昨年は前年比1・3%増にとどまる。 セブン―イレブン・ジャパンの広報担当は「コンビニの主要客層である若者向けに、新しい魅力を拡大したい」と話している。(08年7月18日 読売新聞)
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