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2008年6月 7日 (土)

詩の紹介  「開発の街」 坂上清

 「何がありましたか?」 「いや別に・・・・・」
 意外な方向に走る大衆心理。かわいくもあり、恐ろしくもある。マスコミ、メディアの煽動に、ついつい振り回されてしまいます。好奇心に応じたくない気持ちを作者が閉め括ったのでしょうか。ふとしたことで大衆が動いてしまうことへのユーモアにも受取れます。思わぬことから扇動者になてしまった照れと重なり、冷静さと微妙な危機感を警告しているようにも。
 作者は、1928年生まれ、毎日必ず一時間以上早足で歩く作者は、町田市の開発と、汚染を題材にして沢山の作品を書いています。
 人が見るもの、わたしも見たい、人がすること、わたしもしたい、という人間の心理が変な社会をつくるのです。
 一人が視線を投げると、ひとはその視線の先を注目することがよくあります。
 さて、それでは、私の紹介文での、この詩に注目した視線に、人々は立ち止まってくれるのでしょうか。
 (紹介者 江素瑛) 
         ☆
           開発の街 (4)       坂上清  

 今/ ぼくは/ 汗をふきながら歩いていた/ 街路樹の蔭をつたいながら/ たくさんの人が歩いている舗道を
 
 街路樹は何という名の樹だろう/ふと立ち止まって樹木を見上げた/排気ガスで痛んでいるなあ/ などと思いながら・・・・

 ぼくの後を歩いていた人も/樹木を見上げて立止まった/ するとその人の後の人も/樹木を見上げたのである/ 次の人も止まった/次の次の人も/忽ち人垣が出来てしまった 
 
 ひとりひとり不思議そうに/ 樹木を見上げてかたまっていた

 ぼくはそこから抜けて/ もと来た道を引き返した/ 歩いて来る人たちは次々に
 集まって/ 人垣はますますふくれあがっていった
 
 すれ違ったひとはぼくに問いかけてきた/<何がありましたか?> /<いや別に・・・>
 / ぼくは汗をふきながら歩いていった
 

     現代詩人文庫・坂上清詩集より  2008年5月 東京都・砂子屋書房版
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