詩の紹介 「開発の街」 坂上清
「何がありましたか?」 「いや別に・・・・・」
意外な方向に走る大衆心理。かわいくもあり、恐ろしくもある。マスコミ、メディアの煽動に、ついつい振り回されてしまいます。好奇心に応じたくない気持ちを作者が閉め括ったのでしょうか。ふとしたことで大衆が動いてしまうことへのユーモアにも受取れます。思わぬことから扇動者になてしまった照れと重なり、冷静さと微妙な危機感を警告しているようにも。
作者は、1928年生まれ、毎日必ず一時間以上早足で歩く作者は、町田市の開発と、汚染を題材にして沢山の作品を書いています。
人が見るもの、わたしも見たい、人がすること、わたしもしたい、という人間の心理が変な社会をつくるのです。
一人が視線を投げると、ひとはその視線の先を注目することがよくあります。
さて、それでは、私の紹介文での、この詩に注目した視線に、人々は立ち止まってくれるのでしょうか。
(紹介者 江素瑛)
☆
開発の街 (4) 坂上清
今/ ぼくは/ 汗をふきながら歩いていた/ 街路樹の蔭をつたいながら/ たくさんの人が歩いている舗道を
街路樹は何という名の樹だろう/ふと立ち止まって樹木を見上げた/排気ガスで痛んでいるなあ/ などと思いながら・・・・
ぼくの後を歩いていた人も/樹木を見上げて立止まった/ するとその人の後の人も/樹木を見上げたのである/ 次の人も止まった/次の次の人も/忽ち人垣が出来てしまった
ひとりひとり不思議そうに/ 樹木を見上げてかたまっていた
ぼくはそこから抜けて/ もと来た道を引き返した/ 歩いて来る人たちは次々に
集まって/ 人垣はますますふくれあがっていった
すれ違ったひとはぼくに問いかけてきた/<何がありましたか?> /<いや別に・・・>
/ ぼくは汗をふきながら歩いていった
現代詩人文庫・坂上清詩集より 2008年5月 東京都・砂子屋書房版
…………………… ☆ ……………………
テレビが新聞を読み上げる時代になりました。情報ルートが単純化しすぎています。情報の多様化に参加のため「暮らしのノートPJ・ITO」ニュースサイトを起動させました。運営する団体・企業の存在感を高めるため、ホームページへのアクセスアップのためにこのサイトの「カテゴリー」スペースを掲示しませんか。文芸同志会年会費4800円、同人誌表紙写真、編集後記掲載料800円(同人雑誌のみ、個人で作品発表をしたい方は詩人回廊に発表の庭を作れます。)。企業は別途取材費が必要です。検索の事例
連携サイト穂高健一ワールド
| 固定リンク
コメント