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2008年5月31日 (土)

詩の紹介 「 手と手 」 小澤郁美

  (紹介者 江素瑛)      
 暖かい気持ちが湧いてくる作品です。差し出す手と差し出される手。人の好意を受け勇気と感謝。手と手の触れ合いで、こころのやさしさと体温の温かさがしんみりと伝わってきます。
 悩みなどないように、明るくふるまう人たち。そのなかの誰と誰が、心の奥に他人に告げられない辛さをかかえているのでしょうか。うわべではわからない。突然、死を選ぶ人もいる。あなた、辛い気持ちでいませんか? 誰かが声をかければ、その人は死なず済んだのでしょうか?
どこかで、辛い気持ちを持つ人に、おそらく、この詩は癒しとなるでしょう。
                ☆

              手と手       小澤郁美

人工太陽が輝く/  巨大なショツピングモール/  天井の高いこの街にぬかるみはないと思った/  あたらしい職場で油断をしていた/  足をすべらせてころんでいた/ すると 大きくて温かな手がさしだされた/ まがったことが大嫌/ 「臭いものにふたをしろ」が口ぐせ/ 嫌なことは嫌とはっきり言って/ 豪快にアッハハと笑う/Kさんはおんな親分のようだ
            *
薄暗い池袋の地下道を歩いた/ 幼い頃 母と弟妹と/ いつの間にか/ 母の右手に弟 左手に妹/ わたしはその背中をみていた/ 「おねえちゃんがかわいそう」/ ちさくてやわらかな手がさしだされた
            *
哀しいほどにすんだ空 秋の日差しのなかで/ こぼれおちた時間のかけらを拾いあげる/ 今日はつらさよりもやさしさにつつまれていていたいとおもう

    詩誌 「まひる」 2008年5月 第4号より(あきる野・アサの会 PART 2)

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