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2008年5月 9日 (金)

文芸同人誌に関するある話題

 雑誌「文学界」の文芸同人誌評欄がなくなるというニュースが出たが、同人誌の存在をしめすメジャーな情報がなくなるのは寂しいが、書き手の多くは、「文学界」同人誌評とは無縁ところにいるはずである。
 「文学界」同人誌評では、古典的で本格的な、特に洗練された日本語による文学的表現に優れた作品を選ぶことが多いので、そういう書き手には残念であろう。いま、日本語の美文という概念が崩壊してしまっているので、その基準は貴重なものがあった。
 評者のひとり勝又浩法大教授の話によると、同人誌には、「同じ名前で発表してもらうと過去の作品傾向と比較ができるので、取り上げられやすい」ということだった。
そこへいくと、バカボンは、雑駁な文章でペンネームを変えて発表するので、あまり取り上げられなかった。ただ、取り上げられると同人誌仲間が非常に喜ぶのが印象的で、それだけで「そんなにたいしたものなのか」と意義を考えさせられた。
 文芸同人誌のひとつに旋盤工・作家の小関智弘氏の所属する「塩分」というのがある。バカボンは小関氏の講演を聞いたり、小関氏の昔からの友人の文芸評論家・浜賀知彦さん(かつて日産自動車工場の労働運動のリーダーとして活躍した)からの話で、知っているのだが、肝心の「塩分」という同人誌にめぐり合うことがない。
同人誌「塩分」は、文学界の同人誌評に取り上げられ、小関智弘を旋盤工から旋盤工・作家を登場させた。小関さんは、弟さんと共産党員時代に、地下にもぐったこともある活動家だった。小関さんは、18歳のときに、高校を出て51年間、大田区の町工場で旋盤工をしながら「塩分」に参加してきた。現在に至っている。共産党の六全協がでたころ、小関さんは赤旗を配って歩き、その時代に「文学界」同人雑誌評の担当をしいた大田区在住の文評論家・久保田正文氏(故人)に出会う。いつも出入りしている飲み屋に「塩分」を置いてもらっていた。すると、地元の久保田氏が手にとって読んだ。小関さんの「ファンキー・ジャズデモ」という16枚の短編を読んで注目。雑誌「新日本文学」に転載されるきっかけとなった。その後も、「文学界」同人誌評の推薦で、小関さんの作品は直木賞、芥川賞など四度の候補になった。そこから出版社が注目、旋盤工から旋盤工・(ナカグロ)作家・小関智弘が誕生した。
小説「ファンキー・ジャズデモ」は、現在発売中の研究雑誌「文学」(岩波書店)の昭和時代のジャズに関する特集で、秀作として評論の対象になっている。

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