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2008年5月30日 (金)

「さおだけ屋」の山田真哉さんの『女子大生会計士の事件簿』中学生に人気

「ポプラ・ブック・ボックス」(全3巻:計60冊)という学級文庫用の短編集(1つの巻に20編の小説・エッセイが入っている)が売り出されたが、『女子大生会計士の事件簿』の中から「北アルプス殺人事件」も収録されている。
山田さんは、最近はNHKのTVドラマの会計士ものの監修もしているようだ。
山田さんが、作家デビューするまでの経過には、つぎのようなことがあった。
 公認会計士・山田真哉さんのミステリー「女子大会計士の事件簿」(英治出版)シリーズは累計50万部以上、その後会計解説本「さおだけ屋はなぜ潰れない?」(光文社)は100万部以上と好調な売れ行きが話題になっている。そこで、ここでは山田真哉さんのそれまでの経緯を追い「作家起業の成功事例」という視点でまとめて見よう。
【自己潜在力の信頼と行動】
 山田真哉さんは、1976年、神戸市生まれ。大阪大学文学部を卒業後、予備校講師をしていたが、進路に迷った末、1年間1日15時間の猛勉強で公認会計士2次試験に合格。会計士補として中央青山監査法人に勤務。公認会計士3次試験に合格後、友人の税理士たちと起業家支援組織「インブルームLLC」を設立。代表を務めている。
【実現への壁と打開策の的確な判断】
古典や架空歴史物語を読むのが好きだったという山田さんは、会計士を目指している受験生向けに監査の世界をわかりやすく教えたいとの思いが小説を書くきっかけになった。当初、資格試験学校TACに企画を持ち込み「TACNEWS」に「女子大会計士の事件簿」を連載。受験生の読者から「もっと読みたい」との反応が多くあった。本にしたいと思い10社以上の出版社にアプローチしたが、良い反応が得られなかった。
 そんなときに、英治出版で「ブックファンド」というシステムがあることを知る。これは、本の売上を見込んで出費者を募集し、資本参加してもらい、売れて利益がでたら配当を受け取れるというファンド。これには、リスクがあり、誰でもファンドが組めるわけではない。だが、「TACNEWS」での実績を見込まれ、2002年に英治出版からファンドを組んでもらえた。その時の概要は、〈出費費用170万円、発行部数3,000部、第1刷は印税なし、2刷より10%。ブックファンド終了後、売上から経費を引き、英治出版に手数料を支払い、残った金額が配当金となる〉というもの。現在は170万円では、ブックファンドを組成できないが、この時のファンドは、1年半後に終了し、配当金650万円、それと別に印税が受け取れるという大成功を収めた。
【成功体験から、大成功への大胆な展開】
 しかし、それだけでビジネス的に成功したわけではなく、有力な書店をまわり、自ら本の注文を取って歩いた。廻った店の半分には断られ、もう半分が注文をしてくれたという。さらに、費用を負担して日経新聞に広告を出すなど、積極的な販売促進活動をした結果がベストセラーに結びついているのである。こうした経緯をたどると、この成功が偶発性や幸運でなく、合理性をもった活動の連続が好結果を生んでいることが解る。
 とにかく現在は会計士の本業に、執筆依頼、講演依頼と超多忙な毎日。山田さんは、神戸の大震災を経験している。この時の体験が今後も、社会参加型の貢献を意識した進路へ向かわせるのかも知れない。

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