同人誌「小説藝術」47号(新座市)作品紹介
【詩「いとしくて」犬山六郎】
80幾年か役に立ってきた犬歯が、朝目覚めたら抜けていた。かつては白かった色も黄色くなり、根は黒ずんでいる。くたびれ果てた己の姿そのもので、いとおしい、という内容。
【詩二題「春のとき」「朝の食卓」長谷川冨貴】
「春のとき」は、草色に染められる気配を覚えながら/恋慕や嫉妬の感情もあったことを蘇らせる/この 春のときーーという。「朝の食卓」は、毎日、夫の同じ顔、同じ献立。今日の出来を論評しあう。“だけど 平和な世の中っていいね”“落ち着いて食事していられるもの”あと求めるのは、藝術に対する己のエネルーの強さだという内容。
【「ドストエフスキー小論」高杢一正】
筆者の文学へのかかわる話(小説よりも評論をすることにした経緯)と、西洋のフローベルやモーパッサン、日本の漱石や菊池寛、芥川龍之介の話題がある。筆者は、生活を犠牲にする藝術至上主義より、人生至上主義なので、小説より評論をする方を選んだという。そのあと「貧しき人々」の梗概をする。
【随筆「甲州街道」和田聖子】
もと、衆議院議員の私設秘書をしていて、同人誌に小説を書く人の高級老人ホームの生活の日誌。その生活ぶりが描かれていて興味深い。
「小説藝術」発行所=〒352-0032新座市新堀1-7-26、竹森方。
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