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2008年4月19日 (土)

詩の紹介  「ひきこもり」 神信子

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(紹介者 江素瑛)
  湯船の湯に浮かぶ一対ピンクな乳房、若い時期なら、いかにもエロチッチックな光景のはずである。時の流れにつれて、乳房の重さと厚みが減って、薄く軽く湯に揺られている萎んだ乳房、眺めてくる人も触れてくる人もいない、引きこもり気味の老年生活に思わず感傷的な気分が零れてしまう。軽快な筆調で、女性のやりせない寂しい老年の悲しさをユウモアをもって描いている。
                  ☆
         ひきこもり    神信子
     右の足を踏み出せば右へぐらり
     左の足を踏み出せば左へぐらりぐらり
     人間という名を
     忘れる

     あたたかい空気が
     快い眠りへと誘う
     ここは多分
     家という名の箱

     ふわりふわり
     湯に浮かんでいる
     ぺらぺらの
     二つの乳房

     こんなところに身を窶して
     湯に浮かんでいる
     やるせない
     魂という名の乳房

     ( 「掌」94号より )=08年 4月新・原詩人 No 17より

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