佐藤友哉と編集長のトークセッション
(『ファウスト』メルマガより)=2=
佐 藤:最近の漫画から引用したら、若者に媚びてると思われますよ。でもなんか心配になってきたなあ、あんまり調子に乗らないでくださいね。
編集長:何を仰る! 「調子に乗らず、波には乗って!」が僕の座右の銘ですよ!まあ、そういうわけで『Publishers Weekly』みたいな有名どころの業界誌のインタビューを受けた甲斐もあってか、アメリカの出版界をまずはちょこっとだけざわっとさせたみたいよ。それにしても、アメリカのライターさんの能力は本当にすごいね……質問力がすばらしい。最高におもしろかった!
佐 藤:えー、これ以上太田さんのニューヨーク自慢話が続くのは誰もが望まないでしょうし、とりあえず話を『ファウスト』に戻しましょうか。
ずばり、アメリカ版『ファウスト』は日本版『ファウスト』と何が違うんですか?
編集長:アメリカ版『ファウスト』のコンセプトは「very best FAUST」!今まで日本で出版したすべての『ファウスト』を素材に、アメリカ向けに再構成しているんです。表紙はなんと竹さん渾身の描き下ろし!
佐 藤:なるほど、『ファウスト』のベストアルバムなわけなのか……。
編集長:そうそう。第二号とカップリングして考えると、『ファウスト』というバンドの二枚組のベストアルバムみたいな感じ。最終的には諸般の事情でいくつかのタイトルが差し替えになったりはしたけれど、基本のラインナップは僕が独断で編んでいます。なんといっても、真夜中にアメリカ版『ファウスト』の目次を考えるのは最高の体験だったですよ。「自分の編集した雑誌のアメリカ版の目次を立てる」なんてのは、日本人の文芸編集者では初めての体験だろうし、その目次自体も僕的にはかなりおもしろいものになっている。そりゃそうだよね、ベストアルバムなんだから。で、最終的にはもう『ファウスト』という枠にすら拘らないで僕自身の ここ五年くらいの仕事の中からの(対アメリカ向け)ベストにしちゃえ!と割り切ってみたりもして、奈須きのこさんの『空の境界』の一章をそのまま収録してみたりみたいな、アクロバティックな編集にも挑んでみた。というわけで、僕はいつかその「アメリカ版『ファウスト』の日本版」も日本で出しちゃおうと考えてるんですよ。
佐 藤:ああ、なるほど。それはおもしろそうだし、日本の読者にも喜ばれる仕事ですね。アメリカ版にはアメリカ人向けの注釈も入ってたりするわけですか?
編集長:そうそう、アメリカ人が読む『ファウスト』を注釈までちゃんと日本語に直して逆輸入する。村上春樹さんが短編集『象の消滅』で取り組まれている仕事の『ファウスト』バージョンです。
| 固定リンク
コメント