同人誌「R&W」4号(愛知県)作品紹介
本誌は、朝日カルチャーセンター藤田充伯講師「短編小説を読む・書く」の受講者たちの作品だとある。藤田講師は、三重県鈴鹿市に作家・五木寛之氏の「五木文庫」の開設に尽力している縁で、五木寛之特集があり評論なども掲載されている。
【「聖母子と廃本」渡辺勝彦】
地域の定住困難者の支援ボランティアをしている「私」は、一人のホームレスが焼死したのを知る。事件の様相を呈している。死んだ男を知るホームレスが、彼の生前の話をする。死んだ男は、長崎の原爆後に、やけどを負った母親が、やけどを負った乳飲み子に乳を与えている写真を大事にもっていて、その乳飲み子こそ自分である、と主張していたという。彼は、ブコースキーの愛読者であったというのが、面白い。彼についての話をしていると、そこに原爆が投下されてしまう、というので終わる。「私」が他者に物語を聞き、さらにその人も確たる事実らしくない話をする、という設定で、起きたこととの間に、ワンクッション置いてあることで、非現実的な幻想もあるロマンの味がつけられて、イメージが膨らみ、面白い短篇になっている。
【「知らない花」王子元】
九門という男には、妻子があって、町内活動にも力を入れている。そこで、近所に不審者が出入りするというので、町内で協議をし、公園で隠れ密かに遊ぶ子供たちを見張る。その役を終えて家に戻ると、妻が愛人の男といる。妻はそれを期に娘を連れ、家を出て行ってしまう。家族の絆とは何か、と九門が問いかけて終わる。意外な展開の小説で、たしかに起承転結があるが、唐突な展開になっているのが、惜しまれる。
【「再会」山口耕太郎】
青木は俳句結社誌にある俳句の内容と洋子という名の詠み手が、学生時代に同棲した洋子という女性ではないかと思い、連絡をとってみると、彼女はすでに結核で亡くなっていた、という話し。回想の部分が作品の中心になっている。洋子の去っていく理由が、曖昧で淡白。青春時代の雰囲気が、でていてまとまっているが、もう一押しが欲しい気もするが、それが短編の特徴か。
【「ボクの夏休み」松本順子】
高校生がドーナツ屋にアルバイトをして、そこで見た年上の若者たちの生態を描く。ダンキンドーナツ屋のような店らしいが、店内で仕事をする人々の描写力は抜群。小説にかなりの経歴をもつひとでも、仕事場を巧く書ける人は少ない。気分を優先するあまり、意識が回らないのであろう。時代がいつの時点かも不明な作品も見受けられる。現実には人は仕事をすることで社会と結びつく。この小説を読んで、それが大正や昭和の物語だと間違える人はないであろう。
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