文芸同人「砂」の会「砂」賞決まる
文芸同人「砂」の会2007年度「砂」賞を次のように決定した。
☆創作の部「タラスに陽は落ちて」(102号から104号) 山川浩介。
選考評=中国で発明された紙の製法が、唐代の無名な紙漉き職人によって、中近東イスラム圏に伝えられた。この歴史的事実をもとに、兵卒として故国を離れなければならなかった紙漉き職人の、流離の物語として、時間的にも空間的にもスケールの大きなドラマに創作した、山川氏の想像力と、筆力は素晴らしい。
☆詩の部「公園にて」(105号) 高橋義和。
選考評=介護する母を伴い、公園でまどろむひと時、平凡に見える平穏な日常を、人生の貴重な一瞬であると詩に定着させて見せる。
☆随筆の部「鶴爵」(105号)國分實 & 「辞める理由、続ける理由」(105号) 麻葉佳那史
選考評=「鶴爵」老いの品格。……おしゃれであること。奢らぬこと。感動する心を失わぬこと。心が健康であること。……キザでいいのだ。不良でいいのだ。詩の達人は、散文でも達意の表現をする。
選考評=「辞める理由、続ける理由」=現代の中高年労働者の実態を、格別の怒りや告発でなく、感情過多な嘆きでもなく率直に写していく。多くの非正規雇用の若者の実態にも似たようなものがあるのでしょうが、なかなかこうは書けない。
☆奨励賞「金木犀の花」(106号) 夢月ありさ
選考評=健全な家庭小説。これは褒め言葉として使っています。現代は健全な家庭小説が書かれることはまれなではないのか。浮気、不倫が小説の定番、いや小説だけでなく現実に親殺し、子殺し、妻殺し、夫殺し等、家庭崩壊のニュースを聞かない日は無く、感覚も麻痺している現代、留学を思いとどまり、家庭に入る早苗の決意は、作者の健全さであり貴重です。(記録 矢野)
なお、「辞める理由、続ける理由」(105号)は、作者・麻葉佳那史(あさは・かなし)さんの許可を得て、このブログに連載で掲載します。麻葉さんは、日本の永井荷風、徳田秋声などに影響された私小説的な作風が持ち味で、地味なものですが、今ではその古風な作風が、混迷する現代をよく表現し得ることを証明したものとして、鶴樹も評価するものであります。
| 固定リンク
コメント