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2008年3月14日 (金)

個人誌「猟」3号(八王子市)作品紹介

【「沈む村で」乾夏生】
戦後まもない村社会のなかで、登という少年の体験を語ることで、村の共同体の中の軋轢を描く。村がダムになるというので、浮き足立つ住民。戦争から帰ってきて、脚を悪くした父親になじまない登は「でかぶつ」という番長のイジメにあうが、それを誰にも告げられず、その境遇から脱出することが、最大の関心事になる。登は、村のお婆から父親の脚が不自由になった理由を告げられる。しかし、その内容を登は知るが、物語では読者には分からない。そのような工夫をする必要があるのか、疑問に思うが、村社会と時代の雰囲気はよく表現されている。整然とした部分と漠然とした部分が混在する複雑な味わいの1編である。おどろおどろした表現力には、存在感があり、雰囲気が良く出ている。

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