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2008年3月22日 (土)

「 辞める理由、続ける理由」(6) 麻葉佳那史

二、三日して土曜日がきた。昼夜、婚礼のある日である。午前十時半ごろホール係の人が若そうな男性を連れて来た。「きょうあした一緒に通しでやり、月曜はこの人が通しでします。そして火曜からは夜を担当するので、この二日間でいろいろ教えてあげてもらいたい」といわれた。新人は富田ですと名乗った。
月曜は私が休みなので、かわりに新人がしてくれるという。
そこで富田さんに洗浄機の準備からはじまり仕事の流れを教えながら、一緒に作業をした。若いだけあって積極的に動いてくれた。
十五時を過ぎて一緒にトイレ掃除にゆくと、
「え、こんなことまでするの」と驚いていた。
 それを終えて洗い場に戻ると十六時で、もう従業員の夕食だ。食器と料理道具を洗って片付けていたら、披露宴の料理開始になる。
 富田さんが「休憩は?」と聞くので「もうスタートだから、休憩はない」と答えた。すると「そりゃおかしいよ、どこだって昼と夜の営業のあいだには最低でも一時間は休憩するものだよ。それがないだなんて、ああ、疲れたよ、いつになったら帰れるんだよ」と喚く。「九時ごろには終ると思う」と返事をする。「え、そんなにするの。疲れたよ。早く上ろうよ」という。若いように見えるが、じつはけっこう年をくっているのだろうか。それともいまどきの若い人は体力がないのかな、と考えながら、もう答えることばのないまま黙った。
 二十一時に洗い場を上り、更衣室に行った。着替えながら富田さんが「このような仕事をするのなら、もっといい店があります。百円の就職情報誌があって、そこにはいいところが紹介されてますから、そういう所に移ることをすすめます」といって急いで去っていった。四十一歳だと年齢をいって。それは私が五十八歳といったからだ。
 翌日、ホール係の人から富田さんはかぜで来られないと電話があったといわれた。また「月曜日は、富田さんが来るかどうかわかりませんが、麻葉さんは休日なので、休まれてかまいません」といってくれた。(つづく)

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