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2008年3月17日 (月)

「 辞める理由、続ける理由」(1) 麻葉佳那史

 フランス料理のレストランで掃除と洗い場の仕事を、アルバイトで勤めている。二千四年(平成十六年)八月二日にはいって、この八月で丸三年になる。よく続けてこられた、と思う。またこれからもひき続き働いてゆきたいものだ。
 一緒に働いていた人が数人、辞めていった。その人たちのことを振り返ってみたい。
 二千三年(平成十五年)七月末で、約三十年勤めた会社をリストラされた。五十六歳だった。それから失業給付を受けながら再就職活動をした。正社員で雇ってくれる会社を職安の端末で探す。
 翌二千四年(平成十六年)七月はじめの就職相談のとき、「正社員になろうとするのは困難です。パート、アルバイトでも厳しい。でもまだやや採用され易いです」といわれた。「そういうことは、もっと早くいってくれればいいのに、また若いのだから見つかります、とずっといっておいたくせに。なにも、一年経っていわなくても……」と言いたかった。しかし、いえないで、失業給付が今月はじめで打ち切りになるので、早く仕事を探さなくては、パート、アルバイトでもかまわないという、切実さの方に気持ちを向けている。そういう自分に腹を立てた。
 それで面接を四社受け、いまの職場の採用をもらうことができた。このときは嬉しかった。またほっとした。ようやく仕事ができる、そして収入を得ることができる、と。
 さてそれが求人票を見て、仕事は先に書いたが、時間給は千円、「その他の手当等付記事項」の欄に「食事付」とあるのが独身者としては魅力であった。
「就業時間」は選択になっており、「九時~十六時」と「十六時~二十時」とあるので、長く働ける前の方を選んだ。
 八月二日の月曜から働いた。その日、十時出勤といわれたので九時半ごろゆくと、ホール係の人が更衣室とロッカーを教えてくれ、そして作業着を渡してくれたので、下着の上に黒ズボンと白いコートを着た。上下共調理師さんと同じものだ。白いコートは地の厚い布地で長袖、ボタンはダブルの背広のようになっている。袖をまくり上げて洗い場に連れてゆかれた。掃除を終えてきた岡本さんを紹介され、仕事を教えられた。洗浄機を動かすための準備から始まり、皿をシンクに移し、水道の蛇口をひねって湯を出しながら液体洗剤をしみ込ませたスポンジで皿を洗いラックに並べ、ラックを洗浄機に入れ、機械が止まるとラックの皿にシャワーを浴びせてラックを出し、皿をタオルで拭く。そして皿をそれぞれの大きさや柄によって収納してゆく。(つづく)

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