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2008年3月30日 (日)

菊池寛「日本文学案内」日本の現代文学概観(10)

    B 浪漫主義
 浪漫主義はまた今も言うごとく自我解放の文学であった。革命によって、今まで抑えつけられていた者が自由の空気を吸えるようになったので、その喜びが確かに文学の中に滲み出ている。しかし、今までの古典主義文学が極端に自我を押し隠して、ひたすら客観的にあろうとし、厳重な法則の中に自我を埋没させていた反動として、自我の姿を赤裸々に露わし、法則を破壊し、形式に拘泥せぬ文学を作ろうとした。すべて自己の叫びを阻むような桎梏を取り除いた。実際フランスの詩人達は自我解放の喜びにひたり過ぎるくらいだった。
 浪漫主義は前述したごとく、ドイツではゲーテ、シルレルの青年時代に既に彼等を激情の嵐で吹きまくったことがあった。「群盗」や「若きウェルテルの悲しみ」は実に浪漫的な感情の所産である。
 フランスでは革命で国に追われた貴族達が諸外国を放浪し、再び帰国した時は、イギリスに渡ったものはウォルタ・スコットを持って帰り、ドイツに行った者はドイツ浪漫派の諸作を持って帰った。例えばフランスのスタール夫人はドイツを流浪して「ドイツ論」を書いた。これがフランスの浪漫主義運動を即頓させた原因に数えられている。かくしてヨーロッパの諸国は19世紀に入ると一様に浪漫主義に化したのである。各国を通じて最も著しい特色は過去の文学と絶縁して、自我を解放したことと、叙情趣味を昂揚したことである。

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