貴志祐介さん。『新世界より』読者へのコメント
1997年『黒い家』で第4回日本ホラー小説大賞、2005年『硝子のハ ンマー』で日本推理作家協会賞長編賞を受賞。『十三番目の人格――ISOLA』『黒い家』『青の炎』が映画化されるなどの貴志祐介さん。3年半ぶり書き下ろし長編小説『新世界より(上)(下)』発売にあたり、講談社「ミステリーの館」読者のためにコメント。
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構想二十五年と謳っているのはけっして誇張ではなく、一番最初にアイデア の原型を思いついてからは、三十年近くたっています。まず、120枚ほど の短編で某コンテストに応募し、さらに700枚ほどの長編を起こしました
が、いずれも、あまりに壮大なテーマの壁に跳ね返され、ものになりません でした。前作『硝子のハンマー』の脱稿後、最後の挑戦が始まり、途中何度 も煮詰まって頭が爆発しかけましたが、ようやく、ここに完成しました。こ の物語だけは、書かずに死ねるかという思いでした。かつてハラハラドキド キしながら読んだ、黄金時代のSFをイメージして書きました。冒険、ファ ンタジー、ホラー、成長小説など、様々な要素が膨らみ、最終的に1760
枚を超える過去最長の作品となりましたが、一気読みのエンターテインメン トに仕上がったという自負があります。SFファンも、あまり読んだことが ないという方も、変貌した千年後の世界で、ひととき現実を忘れていただけ
れば、作者冥利に尽きるというものです。<貴志祐介>
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