同人誌「砂」106号の詩を読んで(2)=矢野俊彦
【「匂い」 江 素瑛】
匂いの記憶になってしまった母。その母の衣類も洗濯され石鹸の匂いに消されてしまったと嘆く。母を失った喪失感が迫ります。
【「カレーライス」 江 素瑛】
母が日常に書き残した筆跡を見つけては、在りし日の母を、そして父を偲び、弟を思う。生前は何気なかった、メモや汚れ物が亡き人のものとなり、かけがえの無いものとなる。根底にあるのは愛情である。一昨年「砂」の新年会に娘さんに連れられて、お見えになった、ご母堂 ・張呉色星さんは2007年8月8日逝去。
【「銀杏並木にて」 たちばなりゅう子】
落ち葉の銀杏並木も、ふたりで眺める今は芽吹きの春を予感する。
【「思い出の濃淡」 北川加奈子(望月雅子)】
あれほど思った夏の日も、今では淡い思い出になった。「真実を述べるのだ」「書く事は良く見る事だ」と教えてくれた人も今は亡くなり、思い出だけだ。人生で充実出来るのは一瞬だと、輝いていた日々は遠くなると病んだ身で思う。
【「風」 秋好 修】
風は偉大である/この一行だけ示されたら脱帽である。よけいな理屈を付記して詩を消してしまった。
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