東京・大雪の日、「グループ桂」57号、合評会に師がテキスト指導
2月3日の思ったより雪のふりしきる午後、同人テキスト誌「グループ桂」掲載作品の伊藤桂一師の批評をきき、合評会をする日であった。電車が運行停止だとか、朝のニュースで伝えていたが、90歳になった師は、こういうことに影響されないので、遅れてはまずいな、と思いつつ、雑用をしていたら遅くなってしまった。着いてみると、師やはり先に着いていて、「いやあ、思ったより降ったね」と澄ましている。一時、血圧の高い時は夫人同伴であったが、最近は元気で、いつもひとりで出かけてくる。
57号の特別巻頭に師は、「枯野」という、詩を掲載している。中国大陸の兵役から帰還して、戦場から戻って、故国の枯野を歩く時の高揚した気分をうたっている。それが昭和16年12月の日付である。
「先生、この詩は気力にあふれてエネルギーに満ちていますね。戦場の緊迫感を背負ったものが出てますね」と例によって先生の作品を評した。さらに「いまの日本の軟弱な精神と根本がちがいます。僕はこの翌年の2月に生まれたんですよ。」というと「うん。キミが生まれる前に、戦争を経験して、それからまた戦場に行ったのだからね。まったく、時代がちがって、話の合わないキミたちと付き合うのだから、こっちも大変な筈だよ」というのには笑ってしまった。
作品評は、花島さんの「村にて」は、褒めていながら「タイトルが悪い。これじゃエッセイの題だよ。結局、その精神が、作品の詰めを甘くしてしまうのだ」と、評。桂木さんの「里桜」も、良く書けていて。いままでいろいろ失敗してきたものが、それでも書き続けているために、難しいところを難なく潜り抜ける能力を獲得した。巧い。――と、しながらも「もうひとつ突き抜ける必要があるね。それが何かは、誰も知る事がない。書いたあなただけが知っているのだ」と厳しい。一同、うなる。
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