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2008年2月29日 (金)

「砂」106号の作品を読んで=中村治幸(2)

 【詩「匂い」 江 素瑛】
 生前の母を「微かな焼き立てのような/パンの匂いが漂っています」というふうに象徴しているのが温かい。その母の入院時の持ち物の「紙ぶくろの中身は/きれいに洗濯されていて/丁寧に畳んでありました/ああ それは石けんの匂い/母の匂いではありませんでした」という表現に母の逝った悲しみが伝わってくる。
【詩「旅の記憶 秋」「十和田湖畔にて」 矢野俊彦】
「紅葉には遅い季節だった/来週にはクローズします」というホテルの今年最後の客だという。その静かさは晩秋に似合っているよう。
「ひときわ際立つ/今宵湖畔の月光」という表現が気に入った。
「詩「風」 秋好 修」
 風のもついくつかの表情を描き、「風こそ神なのだ」といい、/時代を変え、歴史の頁をめくる者は/風雲児と呼ばれるのだ」と訴えてゆく展開が面白いと感じた。

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