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2008年1月19日 (土)

長引く「出版不況」(2)(毎日新聞=手塚さや香、鈴木英生、斉藤希史子記者の取材)

 ◆業界のカラクリ=出版数多ければ、前払いで経営維持
 新風舎の説明会があった9日の夕、草思社の再生法申請が報じられた。この夜、都内で開かれた書店関係団体の新年会。参加者によると、集まった出版社の社長らは「大変なことになった」と驚きを口にしたという。コンスタントに話題書を出していた草思社の破綻(はたん)は、90年代後半から続く出版不況の深刻化を示す事態だからだ。
 業界全体の実売額は96年の2兆6980億円をピークに、06年の2兆2627億円まで、04年を除き毎年減少してきた。要因にインターネットや、新刊本を安く売る新古書店の普及が挙げられる。
 一方で、新刊書籍の点数は96年の約6万点から、06年は約8万点まで増えた。この間、返品率は約40%で高止まっている。
 業界には、取次会社が実績のある出版社に翌月分の代金を一部分、前払いする仕組みがあるため、返品が多くても出す本の数が多ければ、経営を維持できるのだ。
 出版不況の出口は見えない。出版ニュース社の清田義昭代表は「出版社が良い本を読者に届けるという基本を再確認し、社会全体が読書の大切さを強調するなど、根本的な方法しかない」と話す。

 ◆自費出版の書店売り=広がりは96年以降、著者は中高年男性
 もともと自費出版の本は、著者がすべて買って配るのが普通で、書店での販売は例外的だった。書店売り方式が広まったのは96年ごろ。NPO「自費出版ライブラリー」の伊藤晋理事長によると、先駆けは近代文芸社で、一般から募集した原稿を、通常の商業出版物として流通させるAタイプ▽費用は著者負担だが書店に流せるBタイプ▽書店に出さないCタイプ(元来の自費出版)の三つに分けて刊行し始めた。
 96年設立の文芸社も、近代文芸社のBタイプと似た仕組みで本を出してきた。「新風舎出版賞」の創設もこの年。00年には文芸社も賞を始めた。伊藤理事長は「これらの賞が出版点数競争を過熱させた」と指摘する。さらに文芸春秋や講談社、小学館など大手出版社でも00年前後から、自社か関連企業で自費出版本を出す動きが目立ってきた。

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