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2007年11月 4日 (日)

小泉今日子の書評=沼田まほかる「猫鳴り」(双葉社)

(読売新聞11月4日付、以下全文)
《人間の心の中の暗闇を灯りももたず手探りであるかされているようで、なんだか少しビクビクしながら読み始めた本だった。
 やっと授かった子供を流産してしまった40歳の主婦は、空っぽになってしまったお腹のなかに小さな秘密を隠している。父親と二人暮らしの不登校の少年は、自分の心に潜むブラックホールから沸き出る衝動を恐れている。妻に先立たれた孤独な老人は、愛猫の最後を看取りながら自分にも必ず訪れる死の準備をしている。三つの物語を貫くのは1匹の猫「モン」の存在だ。
 「モン」には、暗闇も日溜りも関係ない。ただ生まれ、生き、死んでゆく。その自然な命の姿は人間が忘れかけた何かをしっているように見える。猫は人間を救ってはくれない。ただ、暗闇に光る猫の眼が行き先を示してくれるかも知れない。希望の光は暗闇を知ってこそ、見えてくるのだろう。そう思いながら、穏やかな気分で私はこの本を閉じた》

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