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2007年11月16日 (金)

同人誌「文芸中部」76号(東海市)作品紹介(2)

【「ハイハイ学校」朝岡明美】
待子は50歳代後半か。5年前に分かれた夫の義郎は、いまだに復縁をして欲しくて会いにやってくる。しかし、彼女は、生まれてきた子供が障害をもっていると、姑に彼女の家系を問題にされたことや、交通事故で娘が亡くなってしまったこと。実家の兄の事業がうまくいかなくなると、夫が彼女に実家の債務が及ぶのを恐れ、離婚をしたらどうか、という話を切り出した。それを機に離婚する。女性の所属場所の喪失を描く。独りになると30になる息子が出入りし、元の夫も出入りするような曖昧な生活をしている。そのなかで友人から催眠商法に参加することを教えられ、一時の陶酔感を味わう。地に足がついているのかいないのか、不明な現代人の宙ぶらりんな精神状況を表現したようだ。
 最近、妻が夫への積年の鬱屈に、恨みを爆発させ殺害する事件が報じられている。女性は結婚すべき、夫の家風に従うべき、離婚しても実家に戻れない、そういう環境のなかで、この小説の主人公は、そうした疎外感の高まりを薄めようとする努力をしているのかもしれない。

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