詩の紹介 「家族」田中順三 (詩集「あかねぞら」より)
(紹介・江素瑛)
現代の家族風景を書かれた作品です。核家族が抱いている様々な社会問題をさりげなく表現しています。
古き時代の大家族、曾父母、祖父母、父母、子、孫、曾孫の構成は、今には羨ましい稀な存在であります。上の人は、下の人に教えを、下の人はそれを習い、従い、同じ屋根の下に、最期まで互いに面倒を見るのはごく自然なことです。
休日など子の都合によって、押し付けられてきた孫の面倒を見るが、孫たちの描いた家族の絵は/おじいちゃんやおばあちゃんはいない/ そうして、老人ホームなど施設に入れられると、忘れられたように、家庭から排除されてしまう家族の祖父母たち。人の行き着く先は孤独の庭です。
☆
家族 田中順三
三人の子供に五人の孫がいる/ 日曜日にはその孫たちがやってくる/ いつものように/テレビゲームをやり/かくれんぼをし/お絵かきをした
夜遅く迎えに来た親たちと帰ったあとは/妻も私もつかれ果てて/気落ちした顔をつき合わせ/お茶を飲んだ
テーブルの上の/小さな丸いガラスの花瓶に/一番下の孫娘が庭から折ってきた/
赤マンマが入っている
壁に並んでいるのは/孫たちが描いたそれぞれの家族の絵だ/パパとママそれに当人ときょうだいがいて/おじいちゃんやおばあちゃんはいない
詩集「あかねぞら」田中順三(土曜美術社出版販売)より。
| 固定リンク
コメント