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2007年10月26日 (金)

遠野美地子「絵島夢幻」(「文学街」別冊号―241号)を読む

 単行本に相当する歴史文学だが、同人誌に一挙掲載という形態は珍しい。徳川6代将軍家宣の後閣で取締役を務めた絵島が政争のなかで、歌舞伎役者との交情で、疑獄事件として処罰された史実は有名。
 作品は女性ならではの、繊細な表現で、絵島の子供ころから、幕府内で権勢を誇り、失脚するまでを、歴史的背景を手際よく示しながら、絵島の孤独な晩年を描く。春・夏・秋・冬の各章に分けて絵島の生涯を描ききる。周辺の人物をそれぞれ視点を変えて絵島の姿を浮き彫りにしている。長い物語を興味深く読み込ませる筆力には、感銘を受けた。江戸徳川時代の裏面史に興味を持つ人にも一読を勧めたい。
 大衆小説的でなく、純文学的ではあるが、中ごろから終盤にかけては、読み物としても充分に面白く読ませるものになっている。

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