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2007年9月25日 (火)

詩作品の紹介 「せめてもの」柿添 元

 (紹介・江 素瑛)
 遺言状のように書かれた詩です。遺言とういのは、死後の「将来」について、のぞみというか、責任というか、未練というものか、改めて書き留めたものです。
 死後はもう語れないものは、生前で語り続けると、遺言にもなります。書き留めた文字、書きとめた絵画、書き留めた音符、死後に持って行けないもの。永遠に生の世を支配する「遺言」も沢山あります。
 本来、死後と生前は全く縁も故もない両世界なのに、せめて生きているとき、自分の死後の「将来」も指図したい気持ちは、世の諸君は持っていると思います。
 土に返せ、海に返せ、無になりたい、と求める作者ですけれども、/ 死人に口なしだからな / と最後は、やはり願っても叶わないかと諦めています。
               ☆
   せめてもの         柿添 元

 ぼくが死んだら/ 裸のまま/ 土葬してくれ/ 土になって/ せめてもの/ 恩返しがしたいから/ でも/ それが不可能なら/ 焼け残った骨は/ 海に捨ててくれ/ 墓など要らぬ/ 金は/ 生きるもののためにこそ/ 使われねばならぬからだ/ ぼくは/ 土になれないのなら/ 無になりたい/ それが/ せめてもの/ ぼくの望みだ/ ただし/ それさえも叶わぬのなら/ かってにしろ/ 俗に言う/ 死人に口なしだからな
              詩誌「岩礁」132号(三島市)「岩礁の会」

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