« 「同人誌時評」「図書新聞」07年9月15日、担当・福田信夫氏 | トップページ | 「文芸同人誌評」「週刊読書人」07年9月21日担当・白川正芳氏 »

2007年9月15日 (土)

詩作品の紹介 「ケイタイ日記」あんの じゅん 

(紹介= 江 素瑛)

 後ろを振り返りしない長女と、過去を思い出箱から出そうとした親を、面白く書かれています。互いの一生は重なる部分もあるけれども、前向きだけを歩く長女を、後ろ見しながら歩く親が追いつくことなく、距離は大きくなるばかり。
 吾が子が成長するほど、離れて行く必然性を、親は目で見て嘆きしかありません。
 <永遠につけ続けられるものじゃぁないんだね>ー永遠に残れるものはない、それは世の絶えず生滅ではありませんか。
  <ボタンひとつで自分の数ヶ月を消去した>--消去したのは、長女の自分だけではなく、親の思いでも入っています。

      
 ケイタイ日記       あんの じゅん

「ケイタイに日記つけてたんだけど/  けっこうがんばってつけてたんだ/ でもね/ <日記フォルダがいっぱいです>って表示が出たの/ 永遠につけ続けられるものじゃぁないんだね/ だから/ 全部消しちゃったよ/ そう 全部/ だって もう面倒になっちゃったし」

十四歳の長女は/ あっさりと/ ボタンひとつで自分の数ヶ月を消去した 
 
  「一つ残らず私の分身」と/ 消去できないデータフォルダで溢れ返る/ 私のパソコン/ ひとつひとつ開かなければ/ 中身も思い出せないのに

 過ぎ去った日々の文字の羅列を/ 綺麗さっぱり払い落とし/ パタン/ ケイタイを閉じると/ 長女は私を振り返りもしないで/ 薄い光りの射す方へ歩き始めた
  
                         (詩誌「まひる」3号より アサの会 あきる野市)

|

« 「同人誌時評」「図書新聞」07年9月15日、担当・福田信夫氏 | トップページ | 「文芸同人誌評」「週刊読書人」07年9月21日担当・白川正芳氏 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 「同人誌時評」「図書新聞」07年9月15日、担当・福田信夫氏 | トップページ | 「文芸同人誌評」「週刊読書人」07年9月21日担当・白川正芳氏 »