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2007年9月13日 (木)

詩作品紹介  「さくら」井手 ひとみ=(紹介・江 素瑛)

 風を感じていたかったー内心に潜んでいた夢が、軽快な筆触で、展開しました。そこで横に現れたのは、格好いい男でした。信号を待っている間に、想像力が働きました。
 しかし、男が弁当のカラを踏んだ、一瞬、想像が現実に変わりました。
 踏み潰された沢山の夢々が人の一生をどれだけの潤いを与えられたのか、どれぐらい人を成熟させたのか。
☆掲載・詩誌「さちや」No.136(岐阜市)より

「さくら」   井手ひとみ
風を感じていたかった/ 道を渡る男の白髪まじりの髪が/ 風になびく/ なんの関係もないひとだけれど/ 桜が散るこんな朝/ ひととき 鼻の高い横顔を/ 見つめていていいだろう                                  

信号が青に変わる/ 男はさっさと先を歩いていく/ 年齢の割りに足の長い男だが/ 肩先が少し右にずれている

道を渡りきると/ 男は弁当のカラを踏みながら/ 左に回った/ 私はまっすぐ歩いた/ あんなに見つめていたのに/ もう私には/ 何かが起きる気配もなかった/ 何かが始まる気配もなかった/ 箸袋が桜の吹き溜まりの中で/ くるくる回っている              

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