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2007年9月27日 (木)

同人誌「文学街」240号(東京)作品紹介など(1)

【「鬼才・村尾文の構築術」庄司肇】
「文学街」234号の別冊「村尾文自選短編小説集」に掲載された作品を評論している。筆者の書く立場から、その筆力を高く評価し、疑問点も鋭く指摘する。村尾作品を良く知らない自分だが、もう一度読み返したくなるような魅力のある力強い評論であった。
【「観覧車とビスケ」土井荘平】
 古希を過ぎた佑介が、若い頃に過ごした法善寺横町のあたりの風景を夢ともうつうともなく頭に浮かべ、自分の姿をそこに見たりする。朦朧として心のゆらぎに身をゆだねるしかない老人の姿を描いて、説得力がある。
【「モノローグの快楽」尾関忠雄】
「独白」という行為の意味を「独白」で綴り、時おり哲学的思弁に入ったりする。非常に面白く読まされた。自己の存在の意義に触れたところなどでは、もうすこし哲学的な探究を追求して欲しい気もしたが、ユーモラスな語り口を楽しむことができる。
【「雁」川島徹】
長年、教員をしてきた高浜志郎は、教頭を務め校長になれる資格を持っていながら、転任が多く、また上司にも恵まれず校長の推薦をうけることがない。その高浜の悪戦苦闘ぶりを描いて、リアリティと説得力を持つ。教員の知られざる事務的な仕事の細部も描かれているのは読み応えがあった。自己中心的で身勝手な女性校長の姿も、よく表現されている。高浜が病に倒れ生死をさまよった末に、空に雁をみるところで終る。

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