宮城まりこさんと吉行淳之介(2)
友人の安岡章太郎氏は「吉行淳之介」(64年10月号群像)、「吉行淳之介と自動車の関係」(65年6月号小説新潮)で、吉行から電話があり「いまホテルの二階の窓から街の灯をみていたら、それが、ひどく綺麗である」といようなとりとめない話をしたという。
「これは、まるで高校生が恋愛病にかかったような症状ではないか。しかし、その時の私はまさか吉行が実際に恋愛しはじめたとは思いつかなかった。
私が吉行の口から恋愛について、かなり深刻な口調で相談を受けたのは、それから一と月ばかりたってからである」。《出典・山本容朗著「人間・吉行淳之介」(文芸春秋)より》
僕は、20歳の頃、吉行と宮城さんの関係を知って、作家として人間的な面を垣間見た気がして、新鮮な感じを受けたのを覚えている。吉行は性に関する小説が多いので、長く読まれるかと思っていたが、そうではないらしい。流行作家が、死んでしまうと売れなくなる作家と、死後も売れる作家がいる。読者に同時代意識をもたれている作家は、その生き方が関心をもたれている要素があるのではないだろうか。だから、死んでしまうと情報発信がなくなるので、読まれなくなる。また、松本清張のように死後も読まれている作家もいる。
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